脳梗塞後遺症の方は必見!歩行時の転倒を徹底分析!!!
脳梗塞後遺症により片麻痺が生じると歩行が不安定になり、転びそうになる、または転んだことがある方もいらっしゃるかと思います。以前のブログでも歩行や転倒について取り上げており、当施設ではトルトという歩行分析アプリを用いて、転倒の危険性を利用者様と共有し、安定した歩行の獲得に向けてサポートもしています。
以前のブログはこちら→AI歩行分析トルト 安全な歩行を判断する4つのポイントとは!?
今回は脳梗塞後遺症により片麻痺を呈した方がどの方向に転倒するのか、またどのように転倒しているかについて解説していきます。参考文献はメジカルビュー社の脳卒中片麻痺の基本動作分析(2021年6月10日、第1版、著:長田悠路)となっております。
1.脳梗塞片麻痺患者が転倒する方向
歩行計測中に転倒しそうになった脳梗塞片麻痺患者32名の転倒方向は麻痺側前方55.6%、麻痺側後方22.2%、非麻痺側後方8.3%、麻痺側側方5.6%、後方5.6%、あらゆる方向2.8%であり、麻痺側へバランスを崩す場合がほとんどで、非麻痺側前方や側方にバランスを崩す患者はいなかったとのことです。またその時の足の位置は非麻痺側下肢が前方にある状態だったとのことです。これはいわゆるステップ肢位であり、ステップ肢位は斜め前後方向の安定性限界が狭く、また片麻痺の場合は麻痺側下肢は支持性が低いため、麻痺側全般の方向が不安定になります。そのため、非麻痺側前方や側方へバランスを崩す患者はいなかったのです。
2.7つの転倒パターン
著者は7つの転倒型と転倒割合を示しており、継ぎ足型33.3%、引っかかり型16.7%、麻痺側流れ型16.7%、屈曲型16.7%、逆戻り型8.3%、膝折れ型5.6%、失調型2.8%であったとのことです。先ほどの転倒方向と関連しており、麻痺側前方は継ぎ足型・引っかかり型・膝折れ型、麻痺側側方は麻痺側流れ型、麻痺側後方は麻痺側流れ型・屈曲型、後方は屈曲型、非麻痺側後方は逆戻り型、あらゆる方向は失調型となっています。転倒の経緯は継ぎ足型では非麻痺側のステップ語に支持基底面が狭小し、重心移動ができずに麻痺側ステップが出ず転倒。引っかかり型では麻痺側膝が伸びたまま振り出そうとし、つま先が引っかかり転倒。膝折れ型では麻痺側の膝折れが生じて転倒。麻痺側流れ型では麻痺側への過荷重を修正できず、側方へ流れるように転倒。屈曲型では非麻痺側下肢を持ち上げた際に重心を前方へ移動できずに転倒。逆戻り型では麻痺側立脚期に足関節背屈が生じず、後ろに押し戻されて転倒。失調型ではあらゆる方向へ姿勢調整不良のため転倒となっています。
3.7つの転倒パターンの要因
麻痺側の足関節が背屈しないことで麻痺側下肢に体重を乗せることができず、前方への重心移動ができない方が多いです。重心を前に移動させることが難しい場合、非麻痺側下肢を積極的に前に出したり、体幹を前に倒すことで後方へバランス崩すパターンが屈曲型となります。また歩行速度が遅く、麻痺側側方へバランスを崩すパターンが麻痺側流れ型、足関節背屈制限が著明で非麻痺側後方へ重心が戻ってしまうパターンが逆戻り型となります。屈曲型・麻痺側流れ型・逆戻り型の方は歩幅が小さく、特に非麻痺側の歩幅が小さいです。この状態から前方へ重心移動ができるようになり、非麻痺側の歩幅も大きくなると非麻痺側への重心移動が十分にできないことがあります。これにより非麻痺側が内側に接地し、継ぎ足様になりバランスが取れなくなるパターンが継ぎ足型です。非麻痺側への重心移動ができ、股関節伸展により膝折れが生じなくなった方でも遊脚期に膝が屈曲しない場合、遊脚期で足先が引っ掛かるパターンが引っ掛かり型です。体幹屈曲位の方が体幹伸展した際に下腿後傾による膝関節伸展が解消され急激に膝関節が屈曲するパターンが膝折れ型、体幹・股関節屈曲位での動作により、適切な筋緊張での動作が困難となるパターンが失調型となります。
4.7つの転倒パターンの改善ポイント
➀継ぎ足型
麻痺側下肢の全体的な伸展の筋力の向上、足関節底屈筋群の痙縮の軽減、体幹・殿筋群の筋活動の増加、
➁引っかかり型
麻痺側足関節底屈筋群の柔軟性の改善・足関節背屈可動域の増加、足関節背屈を伴う股関節・体幹伸展の筋力の増加、股関節屈筋群の筋力の増加、非麻痺側STEP位での重心移動の再学習
➂膝折れ型
立位保持の耐久性の向上、非麻痺側膝関節伸展筋力の増加、重心位置の再学習、麻痺側足関節背屈筋群の筋活動の増加
➃麻痺側流れ型
覚醒の向上、足底感覚入力、股関節・体幹の姿勢反応の促通、麻痺側前方への重心移動の再学習
➄屈曲型
足関節背屈可動域の拡大、股関節伸展可動域の拡大、体幹伸展活動の促通、麻痺側下肢支持性の向上
➅逆戻り型
足関節背屈可動域の拡大、足関節底屈筋群の遠心性活動の促通
➆失調型
体幹の安定・四肢の筋緊張の改善、体幹・股関節の伸展活動の促通、屈曲姿勢での動作の改善、安定性限界の拡大
5.まとめ
転倒の要因は様々であり、身体機能に応じて転倒するパターンが決まります。特に脳梗塞・脳出血後遺症により片麻痺が生じた場合、左右差が生じることで左右非対称な姿勢や動作となるため、転倒リスクは高いです。トルトでの動作解析による転倒要因の分析および今回の転倒パターンを踏まえて歩行を分析することで転倒リスクは軽減できると考えます。リハビリスタジオ群馬ではAI歩行分析トルトを導入しているとともに、脳梗塞・脳出血後遺症の改善、歩行の改善・再獲得に尽力しているスタッフが施術を対応させていただきます。HAL®やメディカルケアピットなど歩行の改善に特化したロボットや機器も導入しております。まずはホームページをご覧いただき、利用者様の動画や改善事例をご覧いただくと、どのような施術を行っているかが分かると思います。無料体験もございますので、お電話やメールにてお問い合わせください。
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この記事を書いた人
理学療法士/脳卒中認定理学療法士
平成25年に理学療法士国家資格を取得。同年から令和4年3月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院で勤務し、障害者一般病棟・外来リハビリ、回復期リハビリテーション病棟、訪問リハビリなどを経験しながら、主に脳梗塞・脳出血・脊髄損傷・骨折・神経難病の患者様のリハビリに携わる。その間に日本理学療法士協会の認定資格である脳卒中認定理学療法士を取得し、脳卒中後遺症に対するリハビリを中心に学ぶ。令和4年4月からリハビリスタジオ群馬に勤務。