脳梗塞後遺症による痙縮を軽減させる3つの方法とは!?
リハビリスタジオ群馬の高草木です!
本日は脳梗塞後遺症の一つである痙縮についてお伝えできればと思います!痙縮により手足が硬くなり、思うように動かせない方が多いと思います。またリハビリや施術においても運動や動作の阻害因子となりやすく、痙縮をどのように軽減させるかによって、運動の効率やリハビリの進行にも影響を与えます。痙縮のメカニズムや痙縮を軽減させる方法をご紹介していきます!
痙縮とは!?
痙縮は、脳卒中や脊髄損傷、家族性痙性対麻痺などの中枢神経疾患において、筋緊張亢進を主たる症候とする上位運動ニューロン症候群の神経症状とである。神経症状は、その神経組織が機能しなくなることで生じる陰性徴候と、本来はみられなかった機能が開放されることで出現する陽性徴候として捉えられ、痙縮は後者に属する。定義として痙縮は「腱反射亢進を伴う緊張性伸張反射の速度依存性亢進を特徴とする運動障害」である(引用・参考文献:長谷公隆、痙縮の病態生理、2018、バイオメカニズム学会誌、Vol.42、No4)
脳梗塞や脳出血、脊髄損傷等により脳や神経に異常をきたすと部位によって運動麻痺(まひ)が生じ、多くは経過とともに痙縮が出現します。その痙縮は筋緊張亢進が見られ、痙縮筋は硬くなり、運動の制限や動作の阻害因子となります。また痙縮は筋肉の反射が亢進し、筋肉を伸張した時の抵抗が伸張する速さによって増大する状態のため、関節の曲げ伸ばしでも筋肉が早く伸び縮みすると硬くなってしまいます。
痙縮の軽減に対する電気刺激療法
電気刺激療法の方法として、痙縮筋を伸ばした状態で痙縮筋に対して電気刺激を行い、伸張反射の応答を低下させる方法と痙縮筋の拮抗筋に対して電気刺激を行い、拮抗筋の筋活動を促通することで相反神経抑制(例:肘を曲げる筋肉である上腕二頭筋が痙縮により硬くなってしまった場合、肘を伸ばす筋肉である上腕三頭筋に電気刺激を行い、筋収縮が起きると肘を伸ばそうと感知し、肘を曲げる上腕二頭筋の筋活動が抑制される)を促す方法と2つの方法が一般的にいわれています。さらに相反神経抑制の場合は、拮抗筋の筋活動を促すことでより効果が得られやすくなるため、自動運動や自動介助運動など行うと良いので、川平法との併用も効果が期待できます。
痙縮の軽減に対する振動刺激療法
振動刺激の代表的な生理学的効果は緊張性振動反射による被刺激筋の反射性の収縮及び拮抗筋の相反神経抑制と、振動刺激中に腱反射や伸張反射が抑制される単シナプス反射の抑制といわれています。
川平和美らが考案した振動刺激痙縮抑制法は、痙縮筋と相反する拮抗筋への間接的な刺激ではなく、治療目標となる痙縮筋を伸張しながら直接振動刺激を行います。痙縮筋へ直接振動刺激を行うと緊張性振動反射が生じ、刺激の最初は強い筋収縮が起きますが、持続的に刺激することで緊張性振動反射の抑制が生じ、刺激を止めたあとに痙縮の減弱を認めたとの報告があります。(引用・参考文献:川平和美、片麻痺回復のための運動療法 促通反復療法「川平法」の理論と実際 第3版、2017、医学書院、P27)
痙縮の軽減に対するボツリヌス療法
ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌(食中毒の原因菌)が作り出す天然のたんぱく質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬を筋肉内に注射する治療法です。ボツリヌストキシンには、筋肉を緊張させている神経の働きを抑える作用があります。そのためボツリヌストキシンを注射すると、筋肉の緊張をやわらげることができるのです。ボツリヌス菌そのものを注射するわけではないので、ボツリヌス菌に感染する危険性はありません。ボツリヌス療法の効果は、注射後2~3日目から徐々にあらわれ、通常3~
4ヵ月間持続します。(引用元:【痙縮】患者さん向け小冊子 脳卒中の後遺症)
脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]において歩行障害に対するリハビリテーションの項目で、痙縮による内反尖足が歩行や日常生活の妨げとなっている時に、ボツリヌス療法、5%フェノールでの脛骨神経または下腿筋への筋内神経ブロックを行うことが勧められる(グレードB)。ボツリヌスに関する日本における二重盲検試験の結果、初回投与から有意な痙縮改善効果が得られ(レベル2)、続く反復投与期間には歩行スケールの改善率が増大した(レベル4)。(引用元:脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019])
当施設でできること
脳梗塞・脳出血後遺症による運動麻痺に有効といわれている川平法をはじめ、電気刺激や振動刺激を併用した施術を行なっています!また筋肉の硬さを取り除く方法として鍼灸も受けることができるため、痙縮を軽減したのちに川平法で運動麻痺に対する施術を行い、効率よく施術できるようになっています!
川平法の動画はこちら⇒脳卒中には川平法!!腕を上げる、肘を伸ばすには効果的!!良くなることを諦めない!!
まとめ
痙縮は脳梗塞・脳出血後遺症による運動麻痺によって生じ、手足の動かしにくさと動作障害を引き起こす原因のため、痙縮の軽減・減弱が望まれます。今回ご紹介した電気・振動刺激に関しては当施設でも導入しており、施術可能となっています。ボトックス療法に関しては医療機関との相談が必要となるため、主治医または専門医へ相談していただき、その後にリハビリやトレーニングを受けて頂くと効果が得られやすいと思われます。当施設にて川平法や電気・振動刺激、鍼灸の体験をお待ちしておりますので、お問い合わせ頂ければ幸いです。
この記事を書いた人
理学療法士/脳卒中認定理学療法士
平成25年に理学療法士国家資格を取得。同年から令和4年3月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院で勤務し、障害者一般病棟・外来リハビリ、回復期リハビリテーション病棟、訪問リハビリなどを経験しながら、主に脳梗塞・脳出血・脊髄損傷・骨折・神経難病の患者様のリハビリに携わる。その間に日本理学療法士協会の認定資格である脳卒中認定理学療法士を取得し、脳卒中後遺症に対するリハビリを中心に学ぶ。令和4年4月からリハビリスタジオ群馬に勤務。