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脳梗塞後遺症の歩行リハビリ!速く歩くために必要な2つのポイントをご紹介!

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リハビリスタジオ群馬の高草木です。
本日は速く歩くための歩行のメカニズムをご紹介致します!脳血管障害等の後遺症にて運動障害が出現した際に歩行にも影響が出てしまいます。特に歩行速度は歩行の安定性や自立度とも相関しており、活動範囲も決定しうる因子となっており、歩行速度の改善は日常生活および生活の質の改善にも繋がってくると考えています。

➀歩行周期とは!?
歩行は大きく分けて立脚期と遊脚期の2つの周期に分かれており、さらに立脚期は踵接地⇒荷重応答期⇒立脚中期⇒立脚周期、遊脚期は前遊脚期⇒遊脚初期⇒遊脚中期⇒遊脚終期と4つずつの8つの周期となっています。例えば右足が立脚期の時は左足が遊脚期と左右の周期は相反関係にあり、この周期を交互に入れ替えることで歩行動作となっています。

➁歩行速度は歩行周期のどこで増加するのか?
歩行中の重心速度を見てみると、荷重応答期から立脚中期にかけて進行方向への重心速度が減少したのに対して、立脚中期から立脚終期にかけて進行方向への重心速度が増加していました。立脚期の前半では前方への回転による転倒を防ぐために、床反力の傾きが前から後ろとなり、ブレーキ作用が働きます。後半では一度ブレーキした推進力を再び加速させて前に進むために、床反力の傾きが後ろから前となり、アクセル作用が働きます。そのため、歩行速度の増加には床反力前方成分が関係しており、立脚中期から終期で歩行速度が増加していることになります。
※床反力:身体に加わる外力には重心と床反力が存在する。身体(主に足底)と床の接触部分から生じている反力のことであり、上下方向、左右方向、前後方向の成分に区分される。床反力の上下方向はアナログ体重計をイメージするとわかりやすい。体重計に乗って静止すると自身の体重が表示される。これは足底が加える下方向の外力であり、床反力は上方向に同じ大きさでつりあっている。(福田航、床反力と床反力作用点、2018、理学療法ジャーナル52巻8号P745)

➂推進力に関係する代表的な2つの因子
・Trailing Limb Angle(以下TLA)
TLAとは立脚後期の矢状面における大転子と第中足骨頭へのベクトルと、垂直線のなす角度のことをいいます。TLAが大きいほど、床反力の前方成分が増加するといわれています。
・足関節底屈モーメント
床反力前方成分を得るためには、立脚終期において股関節伸展可動域と足関節底屈筋力が重要といわれています。
※モーメント:ある点を中心として運動を起こす能力の大きさ井を表す物理量といわれています。足関節底屈モーメントとは足関節を底屈させる力の大きさということになります。

➃立脚終期において推進力を得るための前提条件とは!?
歩行の立脚期では荷重応答期から立脚中期にかけて重心位置が上昇し、立脚中期から立脚終期にかけて重心位置が下降します。立脚終期に十分なTLAと足関節底屈モーメントを得るためには、立脚中期に身体重心が高い位置にあることが重要といわれています。重心位置を高くすることで位置エネルギーが有効活用でき、さらなる推進力を得ることができます。

➄脳梗塞・脳出血後遺症による運動麻痺が生じた場合の歩行の特徴
脳梗塞・脳出血後遺症の方々の歩行の特徴として麻痺側の立脚中期の重心位置が低く、立脚終期にかけての前方への重心速度の増加が見られないといわれており、これが歩行速度低下の要因と考えられます。また非麻痺側の立脚中期では重心位置が過剰に高いことも言われています。これは麻痺側立脚期がうまくいかず、足を引きずってしまうのを防ぐために高くなっていると考えられます。そのため、立脚期がうまくいかないと遊脚期にも影響を及ぼしてしまいます。画像では実際の歩行およびトレーニング中の写真を使用し、TLAおよび足関節底屈モーメントの増加を図っています!

➅当施設の改善事例・動画
こちらをご覧ください!!!

➆まとめ
歩行速度の向上には立脚期におけるTLAの拡大と足関節底屈モーメントの増加が必要です。歩行は立脚期と遊脚期に分かれていますが、立脚期の問題が遊脚期へ、遊脚期の問題が立脚期へとつながってしまうため、あくまでひとつの要因としてとらえて頂けると幸いです。今後も歩行のメカニズムや他の動作のメカニズムも取り上げながら有益な情報のご提供ならびに利用者様に学んだ知識や技術を還元できるように研鑽していきます!

髙草木 信太朗

この記事を書いた人

髙草木 信太朗

理学療法士/脳卒中認定理学療法士

平成25年に理学療法士国家資格を取得。同年から令和4年3月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院で勤務し、障害者一般病棟・外来リハビリ、回復期リハビリテーション病棟、訪問リハビリなどを経験しながら、主に脳梗塞・脳出血・脊髄損傷・骨折・神経難病の患者様のリハビリに携わる。その間に日本理学療法士協会の認定資格である脳卒中認定理学療法士を取得し、脳卒中後遺症に対するリハビリを中心に学ぶ。令和4年4月からリハビリスタジオ群馬に勤務。