COLUMNコラム

脳梗塞後遺症、起き上がりに必要なon elbowとon hand

その他

どうもこんにちはリハビリスタジオ群馬の吉田です。
本日は起き上がりについて説明していきたいと思います。前回の寝返りに続き、起き上がり動作も日常生活には欠かせないものとなります。実は、起き上がり動作は難易度の高い動作となっています。背臥位姿勢から、重力に対する姿勢が大きく変化するからです。しかし、この起き上がり動作が自分でできるようになると活動の幅が広がり、生活の質も大きく変わっていきます。最後まで読んでいただき起き上がり動作についての理解を深めて頂ければと思います。

まずは、前回のコラムで説明した寝返り動作を行います。そのあとにon elbow、on handへ動作は移行していきます。
on elbowとは
側臥位から片肘を着いた半側臥位をon elbowと言います。この姿勢になるには反対側の手で床を押したり、ついている方の肘を強く床に押し付けて行います。前述では寝返り動作を行ったのちに起き上がりへと移行すると述べましたが、完全に寝返りをしてしまった後ですと、体幹の側屈運動を行わなくてはならなくなり、十分な筋力が必要になってきます。そのため、寝返り動作にある第2相からon elbowへと移行するのが基本となっています。

メカニズム
第2相からon elbowといってもどのようにすれば?となると思います。そこでどうすればなれるのかのメカニズムについて説明します。寝返りの第2相で反対側の上肢をリーチした際に、そのまま回転を続けると側臥位になってしまいます。この時に回転の軸を肩関節から肘関節へと移行しなくてはいけません。肘関節は屈曲の運動を行います。しかし前腕に対して上腕と体幹との質量は圧倒的に重いため、肘関節を曲げようとすると前腕が浮いてきてしまいます。そのような方法ではon elbowは完成しません。では、どうやって完成させるの?結論から言うと下側の肩関節の水平内転に急ブレーキをかける必要があります。テコの原理を活用して水平内転に急制動をかけると、慣性力によって寝返る方向に回転し続けます。それが隣接した、肘関節へと伝えられ肘関節を中心に回転を続けることでon elbowは完成します。

on handとは?
上記のようなメカニズムによりon elbowが完成した後に行う動作になります。on elbowから長座位へ移行する場面となり、体重支持の場所が肘から手首に代わります。骨盤と下肢とで作られた支持基底面内に身体重心を移動させます。体幹機能が不安定な方は特にon elbowからon handへの移行時に気を付けなくてはなりません。

脳梗塞後遺症で起こりやすい起き上がり
・手すりを使用してon elbowになる
脳卒中により体幹屈筋群の筋力低下や麻痺側上肢の麻痺を認めます。そのため、起き上がり時に非麻痺側で手すりを引っ張り起き上がろうとする戦略となってしまいます。また身体失認や感覚障害がある方でもこのような動作になることがあります。このパターンでは寝返りは可能ですがその後のon elbowになることができません。さらに非麻痺側を過剰に使うことにより、麻痺側を無視したパターンの構築が進みます。
・上肢の力でon elbowになろうとして後方へ押してしまうパターン
脳卒中の麻痺により、麻痺側のリーチ不足が認めます。体幹の回旋が不十分のまま下側の上肢を使って起き上がろうとすると上側になっている肩関節は逆方向に動いてしまいます。そもそも、伸展パターンでの寝返り動作を行う場合だと、麻痺側広背筋の緊張により麻痺側上肢が後方に引き込まれる状態となるため、on elbowにはなれなくなります。
・上肢をつく場所が頭側に近寄りすぎて、on elbowから座位になれないパターン
体幹の屈曲を使わずに、上肢の伸展活動だけで起き上がろうとすると、on elbowになる際に肘をより頭側へついてしまいます。そのため座位になる際に、上肢に体重が乗りすぎてしまい、手の位置を体側へ戻すことができず座位になることができません。体幹機能の低下や一度側臥位を経由してから起き上がろうとする方によくみられるパターンとなっています。

on elbow誘導の仕方
・上肢からの誘導(画像1.2)
背臥位から肩関節屈曲、外旋を誘導し徐々に肘関節を伸展させる→上肢を長軸方向に誘導しつつ肩甲帯の前方突出を誘導する→上肢を外側から内側へ円を描くように誘導し、寝返る側の腸骨稜に向かってリーチを行う→上側上肢の誘導方向を下側の前腕に合わせるように切り替えるとon elbowとなる。
・肩甲帯からの誘導(画像3.4)
肩甲帯を上方回旋し前方突出させる。肩甲帯の誘導により頭部も寝返る方向へと回旋する→肩甲帯の前方突出に伴い上部体幹も屈曲回旋を行う→下方の前腕の長軸方向へと肩甲骨の誘導を変える。そうすることにより、肩関節中心から肘関節中心へと回転運動が切り替わりon elbowとなる。

リハビリスタジオ群馬では、基本動作で困っている方へのリハビリも行っています。できることを増やしていき、活動量の増加を図ることで、その後の歩行動作にも影響を与えてきます。
無料体験も行っていますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。

吉田 光希

この記事を書いた人

吉田 光希

施設管理者/理学療法士

平成31年に理学療法士国家資格を取得。同年から令和4年3月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院に勤務し、急性期一般病棟、回復期リハビリテーション病棟を経験しながら、主に脳梗塞・脳出血・脊髄損傷・骨折・呼吸器疾患の患者様のリハビリに携わる。その間に脳卒中患者に対するHALの効果をリハビリ報告として学会で発表。その後も脳卒中後遺症に対するリハビリを中心に学ぶ。令和4年6月からリハビリスタジオ群馬に勤務。

■学会発表歴
令和02年
第28回日本慢性期医療学会 演題名:HALによる歩行訓練により、歩行能力が向上した症例
令和04年
第29回群馬県理学療法士学会 演題名:頚髄損傷患者へ対する歩行神経筋電気刺激療法装置ウォークエイド®を用いた自主練習の効果

■資格
理学療法士免許
登録理学療法士
日本理学療法士協会指定管理者(初級)
Formthotics Authorized Medical Advisor Course

■経験
急性期一般病棟  回復期リハビリテーション病棟