尿もれトラブル!? そんな時は骨盤底筋を鍛えましょう!!
「急に尿意を感じ我慢できずに漏れてしまう・・・」
「頻繁にトイレに行きたくなってしまう・・・」
このような症状でお困りの方はいらっしゃらないでしょうか?
排尿障害は脳梗塞、脳出血や脊髄損傷の後遺症として多く、お困りの方も多いと思います。
今回は排尿障害について、特に“尿漏れ”の原因と治療についてお話をさせていただきます!
脳血管障害による排尿障害
膀胱は腎臓できた尿を貯める機能(蓄尿機能)、貯まった尿を尿道から排出する機能(排尿機能)の大きく2つの役割があります。
正常な膀胱は、腎臓で作られた尿が膀胱に流れ込むと風船のように膨らみ、尿意を感じたときに膀胱が収縮することで排尿することができます。
脳梗塞・脳出血などの脳血管障害や脊髄損傷などの脊髄障害では、脳と膀胱を結ぶ神経回路に障害が起きます。
具体的には、
膀胱や尿道を締める、緩めるといった信号のやりとりが正常に働き難く、
尿が貯められなくなる、尿が出し難くなるなどの症状が現れることがあります。
このような膀胱機能の障害は尿漏れや尿路感染症の原因となり、腎機能を低下させてしまうこともあるため、治療が必要とされています。
そんな排尿障害の治療としては、病態に応じて薬物療法、患者教育・指導(排尿動作について)、バイオフィードバック、骨盤底筋トレーニングなどの治療を行うことが勧められています。
そんな中でも特殊な機器を必要とせずご自身で鍛えることができる、骨盤底筋トレーニングについてご紹介したいと思います!
骨盤底筋とは?
骨盤底筋とは、名前の通り骨盤の底に位置し、骨盤の中にある臓器を支えている筋肉の総称です。
恥骨、尾骨、坐骨にハンモックのように付いており、尿道や肛門を締めたり、緩めたりすることで排泄をコントロールする役割を担っている筋肉となります。
脳梗塞、脳出血や脊髄損傷により、上記のような膀胱機能の障害が起きた場合、骨盤底筋の筋力が弱くなっている可能性が高いです!
その場合に行っていただきたい運動が、骨盤底筋トレーニングとなります!
また、骨盤底筋は単独で働いているわけではなく、横隔膜、腹横筋、股関節周囲筋群、多裂筋などの周囲の筋肉と連携して働くと言われています。
骨盤底筋だけでなく周りの筋肉を利用した運動方法もある為、ぜひ試してみて下さい。
骨盤底筋トレーニングをやってみよう
骨盤底筋の動かし方
骨盤底筋は体の内側にある筋肉であるため、見たり触ったりできないことから筋肉を収縮させることは難しいとされています。
まずはご自身が骨盤底筋を動かせるのか確認を行ってみましょう。
骨盤底筋の動かし方のコツは・・・
➀肛門を締めるように
➁おしっこや便を途中で留めるように
➂おならを我慢するように
➃固い便を切るように
といったように、尿道や肛門のみ力を入れ、お腹やお尻に力が入らないよう、収縮させます。
骨盤底筋が正しく動かせているか確認してみよう
正しく骨盤底筋が動かせているか確認するために、尾骨に触れて骨盤底筋トレーニングを行ってみましょう!
まず、横向きで横たわり、片手で尾骨に触れます。
その状態で骨盤底筋を収縮させます。
骨盤底筋を収縮させた際にお腹の方向に尾骨が動いていれば、正確に骨盤底筋が働いています。
反対に、尾骨が指を押し付ける方向に動いてしまう方や、どちらの方向も動きがない方、尾骨は動いていないもののお尻だけが締っているような方は、お腹やお尻の筋肉に力が入ってしまい、正しく収縮が行えていない場合が多いです。
お腹やお尻を触って力が入っていないか確認することも重要となります。
リラックスをして、尿道、膣、肛門付近のみを動かす様に意識しましょう。
入門編:仰向けで行う骨盤底筋トレーニング
正しく収縮が行えていたら、仰向けで骨盤底筋トレーニングを行ってみましょう。
【トレーニング方法】
①仰向けで、両足を肩幅程度に開いて、両膝を立てます。
②肛門を締めたり、緩めたりを3-5回繰り返します。
③次は、3秒間程肛門を締め続けてみましょう。ゆっくり締め、締めたまま静止し、ゆっくりと緩めます。これを3-5回繰り返します。
【注意点】
仰向けで運動を行う際も、尾骨に触れることで骨盤底筋が正しく収縮できているか確認を行えます。
また、お腹やお尻に力が入っていないか確認を行いましょう。慣れてきたら回数を増やしていくと効果的です。
上手く動かせていないと感じる方は、骨盤底筋トレーニングに呼吸法を取り入れてみましょう。
【トレーニング中の呼吸法】
①仰向けで、両足を肩幅程度に開いて、両膝を立てます。
②大きく深呼吸を行います。大きく吸って、吐いて、吐ききった後に、肛門を締めます。
③深呼吸と肛門を締める動きを1セットとして、3-5回行ってみましょう。
深呼吸を行いながら運動することでリラックスした状態で出来る為、お腹やお尻の筋肉を動かさずに、骨盤底筋だけが働きやすくなります。
応用編:膝・肘をついた姿勢(四つ這い)、立っている姿勢での骨盤底筋トレーニング
仰向けで行うトレーニングができるようになったら応用的なトレーニングも行ってみましょう。
【膝・肘をついた姿勢(四つ這い)でのトレーニング】
①四つ這いの姿勢を取ります。肘から手まで床につき、膝も床につきましょう。
②肛門を締めたり、緩めたりする運動を3-5回、肛門を締め続ける運動を3秒間×5行ってみましょう。
【立っている姿勢での骨盤底筋トレーニング】
①立っている姿勢で少し前傾になるようにテーブル等に手をつきます。
②肛門を締めたり、緩めたりする運動を3-5回、肛門を締め続ける運動を3秒間×5行ってみましょう。
骨盤底筋が動いていない、やり方がわからない方も大丈夫!
まずは、骨盤底筋の周りにある筋肉を動かしてみましょう。
骨盤底筋が上手く収縮できない場合も、周りの筋肉を動かすことで骨盤底筋が活性化されます!
【内閉鎖筋(股関節外旋方向)のトレーニング】
①横向きに横たわり、両膝を深く曲げます。
②骨盤と上半身は床に固定したまま、上側にきている足を大きく開きます。
③10回から20回を1セットとし、1日3回程度行うと効果的です。
【内転筋群(股関節内転方向)のトレーニング】
①仰向けまたは座っている姿勢で行います。
②丸めたタオルを用意し、足の間に挟みます。タオルをゆっくり挟み3秒程度保持したら、ゆっくり離します。これを5回から10回程度行いましょう。1日3回程度行うと効果的です。
どちらの運動も回数は無理のない範囲で大丈夫ですが、慣れてきたら回数を増やすと効果的な運動となります。
時折、仰向けでの骨盤底筋トレーニングも行ってみて下さい。
今までは動きが得られなかった方も、この運動から骨盤底筋が活性化されたことで、動きが得られてくる方もいます。
まとめ
今回は、脳梗塞、脳出血や脊髄損傷による排尿トラブル、骨盤底筋トレーニングに関してお話ししました。
実際に、骨盤底筋トレーニングを行うのは難しいと感じる方も多いと思いますが、
「トレーニングを続けることで効果を実感した!」と多くのお声をいただいています!
本コラムを参考に是非チャレンジしてみてください!!
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参考文献
日本排尿機能学会,日本泌尿器科学会 編.女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版].リッチヒルメディカル,2019
この記事を書いた人
作業療法士
平成22年に作業療法士国家資格を取得。同年から令和4年3月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院で勤務し、急性期一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、障害者一般病棟、外来リハビリ、訪問リハビリ、介護老人保健施設などを経験。平成27年に促通反復療法(川平法)の研修を修了し、その後は主に慢性期(発症から経過の長い)脳梗塞の患者様のリハビリに携わる。令和4年4月からリハビリスタジオ群馬に勤務。