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脳梗塞後遺症!!なぜ一人で立っていられない?

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皆さんこんにちは、リハビリスタジオ群馬の吉田です。今回は脳梗塞後遺症により、一人で立っていられない現象についてご説明していきたいと思います。脳梗塞後遺症には麻痺があります。しかし、ほとんどの麻痺は片側に出現し、反対側は非麻痺側となります。一側の足には麻痺が生じていないため、片足立ちはできると考えられます。しかし脳梗塞後遺症では麻痺をしていない方の足にも何かしらの障害が生じてしまう可能性もあり、なかなか一人で立つことが難しくなっています。どのような仕組みで立っていることが難しいのかについて、ご理解を深めて頂ければと思います。

麻痺はなぜおこる?
そもそも脳梗塞により、運動麻痺は絶対起こるの?と疑問に思う方もいらっしゃると思います。答えは「NO」です。脳の中には運動に関与している経路があります。その経路上に脳梗塞・出血が起きると運動障害が生じます。その経路を皮質脊髄路と言います。またこの皮質脊髄路は大脳から脊髄へと経路が下降しており、延髄で交差をするため損傷している脳と逆の方に運動麻痺が生じます。

非麻痺側への影響
そもそも麻痺をしていない方は「非麻痺側」ではなくて「健側」となぜ呼ばないのでしょうか。脳の神経経路には姿勢制御を行う経路があります。それが網様体脊髄路と前庭脊髄路になります。これらの神経経路が損傷することで、損傷側と同側の体にも影響を与えます。そのため、麻痺を生じていない方の体でも姿勢制御がうまくできなくなり、立っていることや座っていることが難しくなるケースもあります。また網様体脊髄路と皮質脊髄路の神経経路は近く、皮質脊髄路と網様体脊髄路とが同時に損傷する場合もあります。このように、麻痺していない方にも何かしらの影響を与える可能性があるため、「健側」ではなく「非麻痺側」といいます。

網様体脊髄路とは
大まかに説明すると上記のように、姿勢制御に必要な神経経路となっており、網様体脊髄路は2つあります。一つは橋網様体脊髄路、もう一つは延髄網様体脊髄路と別れています。橋網様体脊髄路とは、その名のとおり橋が関与している神経経路となっています。役割ととしては下肢の伸展に関与しており、同側神経支配となっています。延髄網様体脊髄路とは延髄が関与しており、下肢の屈筋に抑制を働きかけています。またこちらは両側神経支配となっています。

脳梗塞後遺症の立位では
今まで説明してきたことを踏まえると、脳梗塞により脳損傷が生じる→損傷部位により、麻痺が生じてしまう→網様体脊髄路の損傷も認める→非麻痺側にも影響を及ぼす→ひとりで立位保持が難しい。と言った流れで立つのが困難になることもあります。その他にも空間無視などの影響で、身体中心のズレが生じたりとさまざまな症状によって阻害されることもあります。

脳梗塞後遺症の歩行では
麻痺の影響により、歩行時には振り出しにくさを感じることはあると思います。しかし、果たしてそれは麻痺だけのせいなのでしょうか。上記に述べたような、非麻痺側の影響もあると考えられます。非麻痺側の姿勢制御の影響により、立脚期で体幹が崩れてしまいバランス能力の低下につながったり、非麻痺側の足がしっかり伸びていなかったりと麻痺側を振り出す前の段階での準備ができていない場合もあります。
歩行はCentral Pattern Generator(CPG)といって、脊髄内にある周期的な筋活動を発生させる機構によって行われています。よく知られている研究には脊髄を遮断し脳からの指令を届かなくした猫を、トレッドミルに乗せると歩き続けるという研究があります。つまり、歩行は脳からの指令ではなく脊髄でのCPGによる周期的な筋活動により行われているといえます。脳梗塞などの脳卒中では脳の損傷はあるものの、CPGは健在のため歩行は可能となっています。どうしたらこのCPGが賦活されるのでしょうか?それは、固有感覚情報が必要になってきます。特に股関節屈筋の遠心性収縮が大事になっています。しかし、脳梗塞後遺症の麻痺や非麻痺側にも影響を及ぼす姿勢制御の障害が生じることで、股関節の安定性は低下し、股関節屈筋の遠心性収縮が生じなくなる場面があります。そのため、麻痺側は早期から長下肢装具を使用してのトレーニングや非麻痺側も伸展活動を高めることが大事になってきます。長下肢装具を使用することにより、麻痺側立脚期での股関節屈筋群と足関節底屈群の遠心性収縮がえられる他に、膝ロックを行えば、大腿四頭筋などの筋収縮も得られやすくなります。
非麻痺側へ対しての介入の大事さを話してきましたが、やはり麻痺側への介入が重要であり必須ではあります。立っていることに対しては、確かに片方の機能がしっかりと働けば可能になると考えられますが、歩行となれば両側の機能が必要になります。非麻痺側の機能の向上により、麻痺側を代償した歩行で移動手段の獲得が図れるケースはしばしば認めます。しかし、その後の転倒リスク・歩行スピードといった面では、やはり左右対称が望ましいとされています。そのためにも、しっかりとした麻痺側への介入を行いつつ、非麻痺側の姿勢制御にも着目して介入を進めることが大事だと考えられます。

まとめ
非麻痺側は麻痺の影響を受けないが、姿勢制御などの障害は損傷部位によって生じてきます。そのため、一人で立つのが困難になることがあります。姿勢制御を司る神経経路は網様体脊髄路と前庭脊髄路があり、網様体脊髄路は橋網様体脊髄路と延髄網様体脊髄路に分かれています。
歩行はCPGによって構成されていますが、麻痺や姿勢制御障害により、着火剤である股関節屈筋群の遠心性収縮が生じなくなることがあります。そのため、麻痺側は長下肢装具を使用して麻痺側立脚期での、股関節屈筋群と足関節底屈群の遠心性を促す必要があります。
リハビリスタジオ群馬では、麻痺に良いとされている川平法やHALを使用してしっかりとアプローチを行いつつ、必要に応じて非麻痺側など麻痺以外の面にも介入を行っています。ご興味ある方はぜひ問い合わせください。

吉田 光希

この記事を書いた人

吉田 光希

施設管理者/理学療法士

平成31年に理学療法士国家資格を取得。同年から令和4年3月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院に勤務し、急性期一般病棟、回復期リハビリテーション病棟を経験しながら、主に脳梗塞・脳出血・脊髄損傷・骨折・呼吸器疾患の患者様のリハビリに携わる。その間に脳卒中患者に対するHALの効果をリハビリ報告として学会で発表。その後も脳卒中後遺症に対するリハビリを中心に学ぶ。令和4年6月からリハビリスタジオ群馬に勤務。

■学会発表歴
令和02年
第28回日本慢性期医療学会 演題名:HALによる歩行訓練により、歩行能力が向上した症例
令和04年
第29回群馬県理学療法士学会 演題名:頚髄損傷患者へ対する歩行神経筋電気刺激療法装置ウォークエイド®を用いた自主練習の効果

■資格
理学療法士免許
登録理学療法士
日本理学療法士協会指定管理者(初級)
Formthotics Authorized Medical Advisor Course

■経験
急性期一般病棟  回復期リハビリテーション病棟