脳性麻痺は、病気そのものの完治が困難です。治療の目的は症状の改善や二次障害の予防が目的となります。
二次障害とは、過剰に高まった筋肉の緊張による関節の変形・脱臼、姿勢不良による腰痛、運動量低下による肥満などです。
脳性麻痺の治療は状態に応じて、以下の方法が取捨選択されます。
「薬物療法」としては、筋弛緩薬、ボツリヌス菌注射薬、バクロフェン注射薬などが用いられます。これらの薬剤は、主に筋肉を緩めるのが目的です。用いられる薬剤は中枢や抹消の神経に作用し、過剰に高まった筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。
脳性麻痺では、運動障害や姿勢維持の困難、関節の変形、痛みなどが生活上で支障をきたすケースが少なくありません。薬剤の作用により過剰な緊張を解きほぐすことで、動作の改善や介護負担の軽減を図ります。
「装具・補助具・ギプス」の使用も治療の一環となります。補装具の使用目的は主に身体機能の改善です。障害そのものの治癒は難しくても、補装具を上手く活用することで日常生活に必要な動作が大きく改善されます。
さらに体姿勢の矯正、関節の変形予防も補装具の役割です。不良姿勢の放置は、腕や足、脊柱の変形などの二次障害につながります。器具を活用することで、正しい姿勢を保持し、将来的な障害を予防することが重要です。
障害の程度が重度の場合は、「手術」を行う場合もあります。ただし、手術には細心の注意が必要であり、治療の第一選択ではありません。
薬物療法や補装具、リハビリテーションでの対応が難しいケースに対して手術が実施されます。
手術の対象となるのは二次障害です。筋肉の緊張が高く、手足や体幹に変形が生じている(生じる可能性が高い)場合が手術の適応となります。手術は主として整形外科が担当領域です。障害の程度によって神経の切断、筋肉の延長、骨切りなどが行われます。
また、脳性麻痺の治療ではリハビリテーションが重要な役割を担います。「リハビリテーション」は以下の3種類です。
- 理学療法(PT)
- 作業療法(OT)
- 言語聴覚療法(ST)
「理学療法(PT)」は、運動療法を主体とした治療です。歩行や走行、立ち座り、寝返りといった動作をスムーズに行えるよう練習します。単に身体を動かすのではなく、筋肉や関節の動きを滑らかにし、上手に身体を動かす術を身につけていくのが理学療法の狙いです。
「作業療法(OT)」は、生活に欠かせない細かな動作の発育を目指します。OTの役割は、食事やトイレ動作、筆記具の使用など就学や就職に欠かせない緻密な動作の獲得です。
「言語聴覚療法(ST)」は、言葉や飲食に関わる身体機能を対象とします。さらにコミュニケーションもSTの領域です。社会生活を送るうえで不可欠な、文章作成・会話・記憶といった発達を促す訓練が実施されます。
以上が脳性麻痺の治療の概要です。脳性麻痺では障害のない部分の発育を促したり、社会資源(制度・施設)を活用して可能な限り生活の質を高めていく必要があります。
治療方針は医療的な側面だけでなく、福祉や介護といった視点も含めた取り組みが重要です。