COLUMNコラム

起立動作のポイント

その他

はじめに

 起立(座る所から立つ)、着座(立っている所から座る)動作は日常生活の中でもトイレ、ベッド、椅子等行う場面が多いです。また、転倒の場面としても起立・移乗動作は頻度の多い動作で転倒リスクもあります。
安定した起立や着座をするにはどうしたらよいのか、説明していきます。

起立動作のポイント

 起立動作の特徴は、殿部と足部で安定した面で体を支えていた所から、最終的には立つ姿勢になるため足部のみという不安定な面で支えることになることがあります。また、重心も殿部から足部へ前に移動、さらに座る姿勢から立つ姿勢になるため上方向にも移動する必要があります。つまり、重心が前と上の2つの方向について制御しなければならないというところがこの動作の特徴と言えます。この重心移動がうまくいかないと起立動作が失敗してしまいます。今回はこの重心制御を踏まえてポイントを説明していきます。

座った状態から前方に重心移動をする

 起立のはじめは重心の前方への移動から始まります。座った状態から体幹を前に倒して重心を殿部から足部に移動していきますが、この時にお辞儀のように背中が丸まってしまうと骨盤は後傾(後ろに倒れる)してしまい体は前に倒れていますが、重心は前に移動していない状態になってしまいます。この状態だと自身の運動のみでの前方移動では足りないため手すりを引っ張っぱるなどの代償動作が出てきます。そのため背中はまっすぐにした状態で骨盤を前傾(前に倒す)する運動が必要です。

離殿(地面から殿部が離れる)

 1の動きで重心が前に移動した運動から上に移動する運動へと切り替わるタイミングがこの離殿となります。起立動作が困難な方はこの離殿がうまくできていないことが多いです。まず、前方に重心を移動している運動にブレーキをかける必要があります。その役割を行うのは大殿筋(お尻についている筋肉)です。大殿筋により骨盤の前傾を止めても慣性が働き重心は前方に移動し続けます。その力を上方向に変化させるため、離殿の直前には体を支える筋肉である前脛骨筋(足部を持ち上げる筋肉)、大腿四頭筋(膝を伸ばす筋肉)、大殿筋の活動が最大になります。離殿の直前には足が強く床を押し込み前方への重心移動にブレーキをかけます。これらのブレーキにより前方へのエネルギーが上方へのエネルギーに変化するため、効率的な起立動作が行えます。また、離殿は瞬間的な動作であるため、これらの筋肉の活動をタイミングよく行わなければいけず、力の細かな調節などが必要であることから、姿勢制御能力や筋出力が低下した片麻痺患者等では難しい動作となることが多いです。

身体を起こす

 離殿後に身体を起こしてくる動作をする際には股関節・膝関節が伸展(伸びる運動)、足部が底屈(踵を上げる運動)の動き重心を調節しながら起こしていきます。身体が上がってくるにつれて股関節・膝関節の力は少なくなっていきますが、足部の底屈の力は徐々に増えていきます。これははじめは踵にあった重心が徐々に前に移動していくためです。
また、身体が起きてくる時に前や後ろにふらふらしてしまう時はその前の離殿時の重心移動が前に行き過ぎ、または重心移動が足りないことが要因です。

起立動作を獲得するためには

 ここからはどのようにすれば安定した起立を獲得出来るのか、ポイントを話していきます。

正しい座位の獲得

 まず頭の位置は変えずに脊柱を伸展(伸ばす)、骨盤を前傾させた姿勢を作る必要があります。この姿勢はただ背中を伸ばして後ろに反る姿勢ではなく頭部の位置は変えないことがポイントとなります。この姿勢ができると前方への重心移動が行いやすくなります。
骨盤が後傾した座位
骨盤が前傾した座位

前方移動

 次に体幹を前傾させ前に重心を移動させます。この前方移動の時、背中を曲げてお辞儀のような姿勢をしてしまうと骨盤は後傾してしまい重心は前方に移動しません、背中は伸ばし、股関節・骨盤を動かして前方に体幹を傾かせます。

離殿

 ここでは足で身体を支える力が最大になります。足は自分の体重を上回る力で床を押す必要があります。この時に使う大殿筋、大腿四頭筋、前脛骨筋は十分に使えるようにトレーニングをする必要があります。また、足部(つま先を持ち上げる)の可動域も十分にないと前方への重心移動が行えません。可動域も十分に確保する必要があります。
離殿

上方移動

 離殿から身体が上方に持ち上がる過程で生じやすい失敗は身体が後ろに倒れてしまうことです。後ろに倒れる場合、離殿してすぐに後ろに倒れる場合と、少し持ち上がってから後ろに倒れる場合で原因は変わってきます。離殿してすぐに後ろに倒れてしまう場合はその前の離殿で前方移動が十分に行えてない可能性があります。また、少し持ち上がってから後ろに倒れてしまう場合はバランスが悪いことなどの可能性が挙げられます。

終わりに

 今回は起立動作のポイントについて説明していきました。脳梗塞や脳出血の後遺症により麻痺や感覚障害が残存していると左右の足が非対称になること、姿勢制御がうまくできないなど、起立動作ができない、できても大変な方が多いです。リハビリスタジオ群馬では、麻痺などの機能を改善させるとともに、日常生活動作が獲得できるよう、動き方の指導や自主練習の指導を実施して患者様の生活をより良くしていきます!!
ぜひ一度お問い合わせ頂きリハビリを体験していただければと思います。

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大山 直人

この記事を書いた人

大山 直人

令和2年に理学療法士国家資格を習得。同年から令和6年12月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院、介護老人保健施設たまむらで勤務し、回復期リハビリテーション病棟、老健通所リハビリを経験しながら、主に脳梗塞、脳出血・脊髄損傷・骨折・神経難病の患者様のリハビリに携わる。その間に神経領域の学術大会・研修会に参加し、神経疾患に対するリハビリを中心に学ぶ。令和7年1月からリハビリスタジオ群馬に勤務。