視床が関わる神経システムについて
はじめに
皆さん、こんにちは。リハビリスタジオ群馬の竹田です。視床は被殻に次いで2番目に脳出血を起こしやすい部位として知られています。視床を損傷したことによる臨床症状は、感覚障害だけでなく、運動失調や不随意運動、認知機能障害など様々なものが出現します。今回は視床が関わる神経システムについて詳しく解説をしていきます。最後までご覧いただけると幸いです。
視床とは
視床は、大脳半球と脳幹を中継する間脳の約4/5を占めています。体性感覚・視覚・聴覚・平衡覚・嗅覚すべての感覚を大脳皮質に投射する中継核です。また、大脳皮質とループ回路で情報をやりとりしており、注意・記憶・情動・言語・遂行機能・運動調整など大脳皮質が担う多くの機能に関与しています。
視床は、解剖学的に視床亜核に分類されます。部位別には背側内側核群、前核群、外側核群の3群に区切られます。機能別には特殊核(皮質の特定部位へ投射する)、連合核(連合野へ投射する)、非特殊核(皮質全体へ投射する)の3つに分類されます。
視床の神経システム
視床の機能は、線維が連結している部分に応じて6つのネットワークに分類されます。
体性感覚システム
四肢・体幹の体性感覚のうち、触覚と固有感覚は内側毛帯を通り、温度覚は外側脊髄視床路を通り、どちらも視床の後外側腹側核に入力します。顔面・頭部の体性感覚は、三叉神経を通り、後内側腹側核に入力します。後腹側核を出た視床皮質路は、内包後脚を通り体性感覚野に出力されます。この経路が損傷すると体性感覚障害が生じます。
小脳ネットワーク(運動ループ)
運動野からの運動指令は、皮質脊髄路を下行していく過程の橋で、横橋線維にそのコピーを渡し、反対側の小脳虫部および中間部に入力します。小脳で処理された運動の誤差情報は上小脳脚を通り、視床の外側腹側核に入力します。外側腹側核を経由した運動の誤差情報は、運動野に出力され運動ループを形成します。この経路が損傷すると、運動の誤差修正が不可能となり、運動失調を呈します。
小脳ネットワーク(認知ループ)
前頭前野からの認知情報は、橋を経由して小脳の半球部に入力されます。小脳で処理された認知情報は、上小脳脚を通り、視床の背内側核に入力されます。背内側核を経由した認知情報は、前頭前野に出力され認知ループを形成します。このループのどこかが損傷されると、認知機能障害を呈します。
基底核ネットワーク(筋骨格系運動ループ)
運動前野・補足運動野・運動野からの情報は、被殻に入力されます。入力された情報をもとにつくられた興奮性/抑制性の指令が、被殻および淡蒼球から視床の前腹側核・外側腹側核に入力されます。前腹側核・外側腹側核を経由した興奮性/抑制性の指令は、運動前野・補足運動野・運動野に出力され、骨格運動ループを形成します。このループが損傷されると、筋緊張以上や随意運動の低下、不随意運動を呈します。
基底核ネットワーク(前頭前野ループ)
前頭前野からの情報は尾状核に入力されます。尾状核および淡蒼球は、「目的の決定」や「動作の選択」で活動し、その情報は視床の前腹側核/背内側核に入力されます。前腹側核/背内側核を経由した情報は前頭前野に出力され、前頭前野ループを形成します。このループが損傷されると、行動の選択や保持ができなくなり遂行機能障害を呈します。
基底核ネットワーク(辺縁系ループ)
帯状回からの情報は、淡蒼球を経由して視床の背内側核に入力されます。背内側核を経由した情報は、帯状回に出力され、辺縁系ループを形成し、行動の動機づけや情動に関与します。このループが損傷されると、情動機能障害を呈します。
リハビリテーションについて
視床が損傷されると様々な症状が出現することがわかったと思います。運動障害では失調や不随意運動が出現し、感覚障害ではいろいろな感覚の種類や強度がわからなくなります。そのため、視床を損傷した場合には運動障害や感覚障害について詳しく評価をする必要があります。それぞれのリハビリ時のポイントについて以下にまとめていきます。
運動障害のリハビリテーション
大脳基底核や小脳が関与する運動症状に対するリハビリにおいては、外部刺激や内部刺激を症状に合わせて選んでいく必要があります。主に大脳基底核から投射を受ける前腹側核の障害では、内部刺激に反応しにくいことから外部刺激を用いて運動のきっかけをつくり学習していく中で、内部刺激へと移行していく必要があります。反対に、主に小脳から投射を受ける外側腹側核の障害では外部刺激に対して反応しにくいことを考えて、プログラムを組んでいく必要があります。
感覚障害のリハビリテーション
感覚障害に対するリハビリの基本は、感覚が入りやすい環境を設定し、運動を通して感覚のフィードバックをすることです。視床など感覚系の中継核ではフィードバック抑制とよばれる神経機構が存在しています。この神経機構により、興奮と抑制が調整され、感覚がより鮮明なものとなります。リハビリでもフィードバック抑制を応用して介入していきます。具体的には坐骨の下にタオルを入れてから重心移動を行うことにより、坐骨への荷重入力を鮮明に感じることができます。
参考文献
手塚純一ら.神経システムがわかれば脳卒中リハ戦略が決まる.1版,株式会社医学書院,2021,p85-96.
まとめ
いかがだったでしょうか。視床が障害されることで様々な症状が出現します。主に感覚障害、運動失調、不随意運動などが代表的なものとして考えられます。リハビリスタジオ群馬では運動障害や感覚障害などの脳梗塞後遺症に対してリハビリテーションを提供させていただいております。興味のある方は下記のリンクからお問い合わせをお待ちしております。
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この記事を書いた人
群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院、介護老人保健施設たまむらで勤務し、回復期リハビリテーション病棟、障害者一般病棟・外来リハビリ、老健入所リハビリを経験しながら、主に脳梗塞・脳出血・脊髄損傷・骨折・神経難病の患者様のリハビリに携わる。その間に神経領域の学術大会・研修会に参加し、脳卒中後遺症に対するリハビリを中心に学ぶ。令和6年4月からリハビリスタジオ群馬に勤務。