COLUMNコラム

脳梗塞・脳出血後のリハに活かす下肢装具

その他

はじめに

脳卒中は日本人の主要な要介護原因の1つであり、発症後には運動麻痺やバランス障害など様々な後遺症を引き起こし歩行機能の低下を引き起こす可能性があります、そして歩行機能の低下が日常生活の大きな障壁となります。こうした方の歩行能力を補助・改善する手段の1つとして「下肢装具」があります。今回は脳卒中後のリハビリにおける下肢装具の役割と実践的な活用について説明します。

下肢装具の種類と基本的な役割

下肢装具には主に足関節を補助する短下肢装具(AFO)と膝・足関節の両方を補助する長下肢装具(KAFO)があります。これらの装具は、足関節や膝関節の安定化、異常歩行パターンの補正、歩行時のエネルギー効率の改善、転倒リスクの低減などの目的として使用されます。
長下肢装具の画像
リハビリスタジオ群馬で使用している長下肢装具(KAFO)の画像
短下肢装具の画像
リハビリスタジオ群馬で使用している短下肢装具(AFO)の画像

短下肢装具(AFO)の特徴

短下肢装具(AFO)は、主に足関節と下腿を支持・制御する装具で、足関節の不安定性や運動制御の障害を補う目的で使用されます。長下肢装具と比較して構造がシンプルで軽量であり、日常生活への導入がしやすく、活動範囲を広げることが可能です。一般的には、脳卒中、末梢神経障害、脊髄損傷、整形外科的疾患などによって足部に運動障害や変形が生じたケースに適用されます。
短下肢装具は足関節の底屈や内反を制御するために広く使用されており、足関節の支持性を高め、歩行時のつま先引っかかりを防止しスムーズな歩行をサポートする役割を果たします。
また、後述する長下肢装具にも当てはまりますが装具にも素材(プラスチックや金属など)や機能面(足首が固定されているもの、継手がついているもの)が異なる種類が複数あります。

長下肢装具の特徴

長下肢装具は、足関節から膝関節を支持・制御する装具です。脳卒中や脊髄損傷、重度の筋力低下を伴う神経筋疾患などで下肢全体の支持力が低下している場合に有効です。構造としては、足部、下腿、膝関節、大腿部をカバーするように設計されており、必要に応じて骨盤帯まで含まれることもあります。
主な機能は、「関節の安定化」「運動の誘導」「荷重支持の補助」です。例えば、膝折れが生じるような麻痺がある場合に、膝関節の動きを制御するロック機構を持たせることで、安全な立位や歩行が可能となります。また、足関節の内反や底屈傾向が強い場合には、その制御も同時に行うことができます。長下肢装具を使用することで、歩行時の安定性を保つことだけでなく、荷重刺激や重心移動、筋活動を誘導することができます。

下肢装具を利用した治療・機能的練習

下肢装具は単に補助具として使用されるだけでなく、積極的な治療・機能訓練のツールとして活用されます。AFOやKAFOを装着した状態での歩行練習は、正しいパターンを反復する機会を提供し、神経可塑性を利用した運動学習を促進します。
例えば、AFOを使用してのトレッドミル歩行や段差昇降練習は、足関節の背屈機能や膝関節の安定性を意識的に引き出す練習となり、より自然な歩容の獲得につながります。また、KAFOを用いて立位保持訓練や重心移動練習を行うことで、歩行に必要な支持基底面の感覚入力や体幹・股関節の協調性の改善が期待されます。さらに、長下肢装具(KAFO)を用いた交互歩行練習は、特に重度の片麻痺患者に対して歩行機能やADLの改善が見られたとする報告もあり、エビデンスは限られているものの、機能回復の一助となる可能性があります。適切な評価とリハビリ計画の下で活用することにより、リハビリの選択肢の1つとして有効です。
さらに、装具を使用しながらも脱装具を視野に入れた練習(例一部可動性のあるAFOや装具なしでの短距離歩行練習)を段階的に取り入れることで、ご利用者様の潜在的な筋力やバランス能力の維持・改善を図ることができます。これにより、装具への過剰な依存を防ぎ、自立度の高い歩行の実現に向けたアプローチができます。

臨床現場での実用的なポイント

・装具の適合性評価:装具はご利用者様の麻痺の程度、筋緊張、関節可動域、バランス能力に応じて適切に選定・調整される必要があります。
・装着訓練と安全指導:ご利用者様自身が安全に着脱・使用できるように練習を行い、転倒リスクへの配慮も行います。
・段階的な使用と評価:機能改善に伴い、装具の継手調整や軽量化、最終的な脱装具の可能性も含めて継続的に評価します。

おわりに

下肢装具は脳卒中後の歩行再建を支える重要な手段です。特にAFOはエビデンスに裏付けられた有効性があり、歩行能力やADLの改善に貢献します。一方でKAFOに関してはエビデンスが限られており、今後の研究が期待されます。装具は単なる補助具ではなく、リハビリに一環として練習することで効果を高めることができます。ご利用者様1人1人にあった装具選定と活用を通じて、自立した生活への1歩をサポートしていくことが重要です。

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大山 直人

この記事を書いた人

大山 直人

令和2年に理学療法士国家資格を習得。同年から令和6年12月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院、介護老人保健施設たまむらで勤務し、回復期リハビリテーション病棟、老健通所リハビリを経験しながら、主に脳梗塞、脳出血・脊髄損傷・骨折・神経難病の患者様のリハビリに携わる。その間に神経領域の学術大会・研修会に参加し、神経疾患に対するリハビリを中心に学ぶ。令和7年1月からリハビリスタジオ群馬に勤務。