脳卒中後の後遺症 ~痙縮とは~

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はじめに
脳卒中後の後遺症として、「痙縮(けいしゅく)」と呼ばれる筋肉の異常な緊張を引き起こすことがあります。痙縮とは、手足の筋肉が過度に収縮し、自由な動作が困難になる状態を指します。この症状は、日常生活の動作に大きな影響を及ぼし、歩行や食事、衣服の着脱などの基本的な動作を難しくすることがあります。本記事では、痙縮の原因や症状、治療法、リハビリテーションのアプローチについて詳しく解説していきたいと思います。
痙縮の原因とメカニズム
痙縮は、脳卒中による神経系の損傷が原因で発生します。脳の運動を制御する領域が損傷を受けると、筋肉の動きを調整する神経回路が正常に機能しなくなります。その結果、筋肉が過剰に緊張し、意図しない収縮が起こります。
脳卒中後の痙縮は、以下の要因によって悪化することがあります。
長時間の不動:動かさないことで筋肉が硬くなり、痙縮が進行しやすくなります。
神経回路の再構築の遅れ:脳の損傷部分が回復しないと、正常な動作の指令がうまく伝わらず、過剰な筋緊張が続くリスクがあります。
疼痛やストレス:痛みや精神的ストレスが交感神経を活性化させ、痙縮の悪化を引き起こす可能性があります。
痙縮の主な症状
痙縮の症状は個人によって異なりますが、一般的には以下のような特徴があります。
関節が曲がったまま伸びにくくなる(例:肘や膝が曲がり、伸ばせない)
手の指が強く握り込まれて開きにくい
足がつっぱって歩きにくい
異常な筋緊張による痛みや不快感
これらの症状が進行すると、関節が拘縮し、日常生活動作(ADL)の自立度が低下することが懸念されます。
痙縮の治療法
痙縮の治療にはさまざまなアプローチがあります。患者様の状態に応じて、以下のような治療法が選択されます。
ストレッチ
ストレッチは痙縮の改善・予防において非常に重要なアプローチです。道具や機械を使って手や足を20分以上伸張することで効果が確認できたと報告されています。
自宅でできる簡単なセルフストレッチのご紹介
手のひら・指のストレッチ
指の間に反対の指を入れて、ゆっくり大きく伸ばす
肘を置いて行うと腕が安定して緊張がゆるみやすいです。
指を伸ばす際はゆっくり伸ばす。早く伸ばしてしまうと指を曲げる筋肉が緊張しやすいので注意が必要です。
また、指先から伸ばしてしまうことも緊張が入りやすいため注意が必要です。指の根本から伸ばしましょう。
できる方は手首も背屈方向にストレッチをかけます。痛くない範囲で動かします。
物理療法
機械や電気刺激を用いた治療法です。
電気刺激療法:TENs(経皮的電気刺激)は複数の研究で痙縮の軽減効果が報告されています。また、FES(機能的電気刺激)に関しても他の運動療法と併用することで痙縮の改善が期待できます。
振動刺激:一時的に緊張の抑制効果があります。緊張を抑制し、他の運動療法につなげていきます。
装具療法
装具療法は、関節の正しい位置を保つために用いられる治療法です。適切な装具を使用することで、痙縮による関節の拘縮を防ぎ、日常生活動作を改善することが期待されます。
スプリント:手や足の関節を適切な位置で固定し、筋肉の緊張を抑えます。
下肢装具:足部を固定することで内反や底屈を制動します。
薬物療法
筋弛緩薬(バクロフェンなど):バクロフェンは、脊髄反射の興奮性を抑えることで痙縮を軽減する効果があります。内服薬のほか、バクロフェン髄腔内投与療法(ITB)と呼ばれる治療法もあり、重度の痙縮に対して効果が期待されます。
ボツリヌス毒素注射:過剰に緊張した筋肉に直接注射し、一時的に筋肉を弛緩させます。
痙縮の治療における専門職の役割と継続的な支援の重要性
痙縮の治療は、一人で行うには難しい部分が多く、リハビリ専門職や医師などの専門的な視点が必要です。理学療法士や作業療法士は、適切なストレッチ方法や運動療法を指導し、個々の患者に最適なリハビリ計画を立てます。また、医師は薬物療法や注射療法の適応を判断し、定期的に治療効果を評価します。
継続的な支援が重要であり、患者様だけでなく、ご家族や支援者の方がリハビリの中に関与することが求められます。リハビリの進捗を専門職と共有しながら、家庭でのケアを調整することで、より効果的な治療が可能になります。
当施設でのサポート
当施設では、痙縮に対する専門的な介入を行い、ご自宅での注意点や自主練習の方法についても提案させていただいています。患者様の状態に合わせたストレッチ方法や運動プログラムを提供し、日常生活での実践をサポートしています。リハビリ専門職が継続的に評価を行い、より効果的なケアができるよう支援しています。
まとめ
痙縮は脳卒中後の回復において大きな課題となりますが、適切なリハビリテーションや治療を継続することで、生活の質を向上させることが可能です。ご家族や周囲の支援者の方が適切な知識を持ち、患者様を支えることで、より快適な生活を送ることができます。毎日の生活の中で少しずつ改善を目指し、積極的にケアやリハビリを行いましょう。
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この記事を書いた人
令和2年に理学療法士国家資格を習得。同年から令和6年12月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院、介護老人保健施設たまむらで勤務し、回復期リハビリテーション病棟、老健通所リハビリを経験しながら、主に脳梗塞、脳出血・脊髄損傷・骨折・神経難病の患者様のリハビリに携わる。その間に神経領域の学術大会・研修会に参加し、神経疾患に対するリハビリを中心に学ぶ。令和7年1月からリハビリスタジオ群馬に勤務。