ジムでは脳梗塞後遺症が改善しない理由

脳梗塞後遺症はジムで改善するのでしょうか?筋トレだけでは不十分になり得る理由を、神経可塑性の視点から専門的に解説します。退院後の運動選びで迷っている方へ。
近年、健康志向の高まりとともに、ジムやパーソナルトレーニングはより身近な存在になっています。
テレビやSNSでも「筋トレ」「健康寿命」「体づくり」という言葉を目にする機会が増えました。
その流れの中で、
・退院後は体を鍛えたほうがいいのではないか
・筋肉をつければ歩きやすくなるのではないか
・ジムに通えば麻痺も良くなるのではないか
そう考える方がいても不思議ではありません。
しかし、ここで一つ冷静に考える必要があります。
脳梗塞後遺症は、筋肉の問題“だけ”なのでしょうか。
本記事では、ジムでのトレーニングを否定するものではありません。ただし、脳梗塞後遺症を改善するためには「筋力強化だけでは不十分になり得る理由」があります。
その違いを、神経の視点から整理していきます。
脳梗塞後遺症で起きていること
脳梗塞では、脳の一部がダメージを受けます。その結果、筋肉そのものよりも前に、
運動指令がうまく出せない
力の調整ができない
協調的な動きが崩れる
不要な筋緊張(痙縮)が生じる
といった「制御の問題」が起きます。
つまり、本質は単純な筋力低下ではなく、神経回路の再構築が必要な状態 と言えます。
ジムで行われるトレーニングの特徴
一般的なジムのトレーニングは、
筋力向上
持久力向上
負荷を徐々に上げる漸増性
左右対称を前提としたフォーム
を中心に設計されています。
健康な方にとっては非常に有効な方法です。生活習慣病予防や体力維持という点では、ジムは大きな役割を果たします。
しかし、脳梗塞後遺症の場合は少し事情が異なります。
なぜ“筋力強化”では不十分なのか
ここが最も重要なポイントです。
脳梗塞後遺症では、
正しい運動パターンが失われている
代償動作が強化されやすい
意図した神経入力が起きにくい
という特徴があります。
たとえば、歩行練習で麻痺側がうまく出ない場合、体は無意識に健側で補おうとします。
その状態で筋力トレーニングを続けると、「動いているように見える」けれど、本来使いたい神経回路は十分に再学習されないということが起こり得ます。
筋肉を強くすることは大切です。しかし、筋肉を強くすること = 神経回路が再構築されるとは限りません。
神経可塑性という視点
脳には「神経可塑性」という性質があります。繰り返し使うことで、新しい神経回路を作る力です。ただし、そのためには
正確な運動
適切な難易度
フィードバック
意図を伴った反復
が重要になります。
単に回数をこなすだけではなく、どの神経回路を使っているかが問われる のです。
では、ジムは意味がないのか?
そうではありません。
筋力や体力は、回復を支える重要な要素です。ただし、何を目的に、どの順番で、どのような設計で行うかが重要になります。
たとえば、
① 正しい運動パターンの再学習
② 協調性の獲得
③ その後に筋力強化
という順序が必要な場合もあります。
「筋トレをするか、しないか」ではなく、“どの段階で、何を行うか” がポイントになります。
迷っている方へ
退院後、
・ジムに通うべきか
・自宅で自主トレを増やすべきか
・専門的なリハビリを続けるべきか
迷うのは当然です。大切なのは、自分の麻痺が“筋力不足”なのか、“神経制御の問題”が中心なのかを見極めること。その評価なしにトレーニングを始めると、努力が遠回りになる可能性もあります。
まとめ
脳梗塞後遺症の改善は、「筋肉を鍛えること」だけではなく、“脳と体を再びつなぐこと” が本質です。ジムが悪いわけではありません。しかし、目的と設計を間違えないことが重要です。これから運動を始めようと考えている方は、まずは現在の状態を正確に把握し、何を優先すべきかを整理することから始めてみてください。
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この記事を書いた人
令和2年に理学療法士国家資格を習得。同年から令和6年12月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院、介護老人保健施設たまむらで勤務し、回復期リハビリテーション病棟、老健通所リハビリを経験しながら、主に脳梗塞、脳出血・脊髄損傷・骨折・神経難病の患者様のリハビリに携わる。その間に神経領域の学術大会・研修会に参加し、神経疾患に対するリハビリを中心に学ぶ。令和7年1月からリハビリスタジオ群馬に勤務。