なぜ「歌」は言語のリハビリに効果があるの?

はじめに
脳卒中や脳の病気のあと、
「話そうとしてもことばが出てこない」
そんな 失語症 の症状に悩まれる方は少なくありません。
一方で、
会話は難しくても、歌なら歌える
歌うと、ことばが少し出やすくなる
といった様子が見られることがあります。
実はこの現象には、脳の仕組みと、研究に基づいた理由があります。
話す脳と、歌う脳は少し違う
私たちが「話す」ときは、主に左脳の言語をつかさどる部分が働きます。
しかし「歌う」ときには、
• メロディー
• リズム
• 声の動き
• 感情
などが加わり、脳の広い範囲が同時に使われます。
そのため、言語の中枢が損傷を受けた場合でも、
歌に関わる脳のネットワークが比較的保たれていることがあるのです。
歌を使った言語リハビリ「MIT」とは
この脳の働きを活かしたリハビリ方法が、
メロディック・イントネーション・セラピー(MIT)です。
MITは、
✔ メロディー
✔ 一定のリズム
✔ 言葉に合わせた手のタッピング
を組み合わせ、発話のきっかけをつくることを目的とした方法で、
主に非流暢性失語の方を対象に研究・実践されてきました。
日本語に合わせて開発された「MIT-J」
MITは英語圏で生まれた方法ですが、日本語には
• 音の単位が「モーラ」である
• アクセントの仕組みが異なる
といった特徴があります。
そこで、日本語話者に適した形として開発されたのが
MIT-J(日本版メロディック・イントネーション・セラピー)です。
MIT-Jでは、
日常生活で使いやすい短いフレーズを用いながら、
段階的に「話す」ことへつなげていきます。
なぜリズムとメロディーがことばを助けるのか
研究では、MITを行っている際、
右半球の脳(音楽やリズムに関わる部分)が活発に働くことが示されています。
長期的な訓練によって、
右半球の神経ネットワークが発話を支えるように変化する(=脳の可塑性)可能性も報告されています。
歌は、話すための“近道”や“足がかり”として、
ことばを引き出す役割を果たします。
歌は「続けやすいリハビリ」
歌を使ったリハビリの大きな利点は、
楽しみながら続けやすいことです。
「話す練習はつらいけれど、歌ならできそう」
そんな気持ちが、リハビリへの前向きな参加につながります。
歌は、ことばだけでなく、
気持ちやその人らしさを表現する手段でもあります。
当施設の取り組み
当施設では、
MIT-J研修で講師を務める、MITチーフトレーナーが対応し、
一人ひとりの状態に合わせた言語リハビリを行っています。
歌の力と専門的な評価・訓練を組み合わせながら、
「伝えたい気持ち」を大切に支援しています。
まとめ
歌を用いた言語リハビリには、
• 脳の広い範囲を活用できる
• リズムとメロディーが発話を助ける
• 日本語に適したMIT-Jという方法がある
• 楽しく、継続しやすい
といった特徴があります。
失語症のリハビリにおいて、
歌は科学的根拠に基づいた、大切な支援の一つです。
リハビリスタジオ群馬では、個別の状態に合わせて安全に筋力を高めるプログラムをご提案しています。
気になる方はぜひお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
言語聴覚士、音楽療法学会認定音楽療法士。音楽療法士として脳血管障害専門病院で言語訓練、歩行訓練、注意訓練等に携わった経験から、言語障害に対するリハビリテーションに興味を持つ。言語聴覚士国家資格取得後は、三重大学医学部附属病院の基幹型認知症疾患医療センターに勤務。認知症鑑別診断のための評価やご家族支援等の業務の傍ら、失語症の治療技法であるメロディック・イントネーション・セラピー(MIT)の研究に取り組む。平成27年より群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院に勤務し、回復期リハビリテーション病棟、障害者一般病棟・外来リハビリ、訪問リハビリなどを経験しながら、主に脳梗塞・脳出血・神経難病の患者様のリハビリに携わる。令和7年4月からリハビリスタジオ群馬に勤務。LSVT LOUD認定セラピスト。MITチーフトレーナー。