感覚障害に対するリハビリ

はじめに
脳卒中や脊髄損傷、末梢神経障害などの神経疾患では、運動麻痺だけでなく感覚障害を伴うケースが少なくありません。「触っても感覚が鈍い」、「しびれがある」、「足裏の感覚がなくて歩きづらい」などの症状は、見た目では分かりづらいものの、日常生活を送る上で大きな支障をきたします。感覚障害は、単に「感じにくい」だけでなく、動作の不安定さにも直結するため、リハビリを行って改善していく必要があります。本コラムでは、感覚障害の基礎から、改善を目指すためのリハビリの実践方法までをわかりやすくご紹介していきます。
感覚障害とは?
人の身体は皮膚や筋肉、関節にある受容器を通じて、触ったり押されたりする刺激、温度、そして手足の位置や動きに関する情報を感じ取っています。これらの情報は神経を通じて脳に送られ、「触っている」「冷たい」「膝が曲がっている」などと認識されます。しかし、脳卒中や神経の損傷があると、こうした感覚情報がうまく伝わらなくなり、感覚が鈍くなってしまうことやピリピリ・ビリビリとした不快な感覚が出たりすることがあります。これが「感覚障害」です。
感覚障害は、日常生活にさまざまな影響を及ぼします。たとえば、箸をうまく使えずに落としてしまったり、足裏の感覚が曖昧なために転びやすくなったりします。また、熱いものを握っても気づかずにやけどをするなど、怪我のリスクも高まります。
感覚リハビリの実践方法
感覚は治らないと思われがちですが、実は神経系には「可塑性(かそせい)」と呼ばれる再学習の力が備わっています。適切な刺激を繰り返し受けることで、感覚が少しずつ戻ることもありますし、完全に戻らなくても「感覚がなくても安全に動ける工夫」を身につけていくことが可能です。感覚障害に対するリハビリでは、多様な刺激と方法を組み合わせて身体と脳を再教育していきます。
以下に、感覚に対するリハビリで代表的なものをご紹介します。
触覚再教育(Sensory Re-education)
タオルやスポンジ、フェルト、金属、ブラシなど、質感の異なる素材を皮膚に当て、触覚の刺激を与えます。また、保冷剤やお湯袋を使って温度の違いを認識するリハビリも行います。目を閉じた状態で「どこを触られたか」「今触っているものはどんな素材か」などを答えてもらうことで、ただ触るだけでなく、刺激を言葉で表現し、脳に認識させるプロセスを繰り返します。さまざまな触感を皮膚に与えることで、失われた感覚の再認識を促し、脳に新たな学習を促す方法です。
位置覚・運動覚の再教育
セラピストが患者様の指や手首をゆっくりと動かしながら、「今の動きは上向き?下向き?」「右に曲がった?左に曲がった?」といった問いかけを行います。また、非麻痺側の手をある位置に持っていき、麻痺側の手でも同じ位置に動かすようにする模倣運動も行います。関節や手足の位置、動く方向を感じ取る力を回復させるための訓練です。バランス感覚にも密接に関わるため、特に下肢に感覚障害がある方には重要な訓練となります。
作業療法による実用訓練
手の感覚が弱い方には、洗濯ばさみを開け閉めする、ビーズを糸に通す、箸を使うなどの練習が行います。こうした動作は、日常生活の細かい作業を再びできるようになるために役立ちます。足の感覚が鈍い方には、足裏にさまざまな素材の刺激を与えるマットや、不整地を歩くような環境を使ってリハビリを行います。また、患者様自身の困りごとに直結する動作を再現しながら行うことも重要です。感覚が低下した手や足であっても、生活の中で「使える」ようにしていくための機能的な訓練です。
電気刺激療法
TENS(経皮的電気神経刺激)を用いて、皮膚の表面に心地よい程度の電気刺激を加えます。感覚神経に直接働きかけることで、麻痺した部位の感覚を呼び起こすような効果が期待されます。また、FES(機能的電気刺激)のように、筋肉の収縮を伴う刺激を用いることで、運動機能との連携を高めることも可能です。微弱な電気刺激を皮膚や筋肉に与えることで、感覚神経の興奮を促し、感覚の回復を目指すリハビリです。
まとめ
感覚障害は、見た目にはわかりにくく、周囲から理解されにくい症状です。しかし、本人にとっては非常に大きな困難であり、生活の質を左右する大きな問題です。感覚は失われたら終わりではありません。適切なリハビリを継続することで、少しずつ「感じる力」は育っていきます。完全に元通りでなくとも、「使いやすい」「安全に動ける」身体を目指すことは十分に可能です。諦めず、感じる訓練を重ねることが、再び安心して生活する未来への一歩となります。
リハビリスタジオ群馬では感覚障害に対して電気刺激や感覚入力によるリハビリを行っています。興味のある方は無料体験も行っていますので、ぜひ一度お問合せください。
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この記事を書いた人
群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院、介護老人保健施設たまむらで勤務し、回復期リハビリテーション病棟、障害者一般病棟・外来リハビリ、老健入所リハビリを経験しながら、主に脳梗塞・脳出血・脊髄損傷・骨折・神経難病の患者様のリハビリに携わる。その間に神経領域の学術大会・研修会に参加し、脳卒中後遺症に対するリハビリを中心に学ぶ。令和6年4月からリハビリスタジオ群馬に勤務。