COLUMNコラム

見過ごせない肩の痛み!!腱板損傷とは?

その他

今回は、肩の痛みの原因として見過ごせない、腱板損傷について解説したいと思います!

「腕が痛くて上がらない・・・!!」
「腱板損傷って脳梗塞・脳出血と関係あるの・・・!?」

といったお悩み、疑問がある方はぜひご覧ください!

●腱板損傷とは

腱板損傷とは、
肩関節にある腱板を傷つけてしまう、断裂してしまう状態をいいます。
腱板とは、4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)によって構成された、関節の安定性を高める役割の組織になります。

この腱板のうち、棘上筋は骨と骨(肩峰と上腕骨頭)の間に位置しているのですが、
様々な原因によって筋肉と骨の衝突(インピンジメント)が起こります。

詳しくは画像①をご覧ください!

腱板断裂の原因は、
転倒して肩をぶつける、重たいものを持つなど、
肩関節に急激な負荷が加わり腱板が切れてしまう外傷性の腱板損傷や、
年を重ねるごとに腱板が徐々に弱化していき、次第に切れてしまう変性による断裂、
などの原因があります。

発症しやすいのは、中高年の男性、利き手の影響なのか右肩に発症しやすいようです。

診察では、腕を上げることが可能か、関節拘縮があるか、棘下筋の萎縮(筋肉が痩せ、薄くなっている状態)があるか、を診るようです。

検査では、MRIの画像診断にて腱板部の損傷、断裂を確認します。
リハビリでは診断できませんが、損傷の可能性があるかテストできます。
今回は、脳梗塞・脳出血により麻痺がある方にも実施しやすいテストをご紹介します!

Neer Test(ニア テスト)
①被検者は椅子などで座位姿勢をとります。
②検査者は患側の肩甲骨を手のひらで押し下げ、もう一方の手で腕を外に開きます。
 この動きによって、上腕骨と肩甲骨を押し当てる格好になります。
③腕が90度開いたあたりで肩に痛みが生じた場合はテストが陽性になります。

詳しくは画像②をご覧ください!

テストが陽性の場合、腱板損傷の疑いがあります。
上述したとおり、画像診断にて腱板損傷の有無、程度を診てもらうことをお勧めします。

ここで注意していただきたいのが、
“腱板の弱化”は脳梗塞・脳出血後の麻痺の影響でも起こり得るということです。
脳梗塞・脳出血の発症後に、急に肩が痛みはじめた。。。
まさに、この状態は腱板が関わっている可能性ありです。

つまり、脳梗塞・脳出血などで麻痺を呈した場合には、腱板の弱化が生じ、肩関節の安定性は損なわれ、
悪化していくと痛みが生じたり、腱板損傷のリスクが増していくことになります。

よって、療法士の指導のもと、
筋肉と骨の衝突(インピンジメント)を回避しながら
腱板を強化するトレーニングを行うことが大事であり、
麻痺を呈した方にとっても、非常に重要なものになります。

●腱板損傷の症状

特徴的な症状は、
腕を上げた時に肩関節に発生する鋭い痛み、
夜間の睡眠を妨げるような痛み、
腕が上がらないといった症状です。

また、筋肉と骨の衝突が起こっているので、
腕を上げた時に肩関節の前面で「ゴリゴリ」、「ザリザリ」と音がする場合もあります。

「肩が痛い」、「腕が上がりにくい」といった症状ですと、四十肩や五十肩をイメージされる方が多いかと思います。
実は、四十肩や五十肩と診断された方が、MRIで精密検査をしてみると腱板損傷が見つかった、ということもよく聞く話になります!

ここで、四十肩、五十肩について説明です。
症状は、肩の動きが悪くなり痛みが出現することであり、腱板損傷ととても似ています。

それもそのはずで、四十肩、五十肩の原因が、まさに腱板の損傷や炎症など、になるからです。
その他、上腕二頭筋長頭腱の炎症、関節包の炎症など多岐に渡る原因があるため、
四十肩、五十肩とただ言われても原因を特定しなければ適切な治療は受けられないため注意が必要になります。

●腱板損傷の治療

まず優先されるのが保存療法です。
外傷などで炎症が強い場合は、三角巾などで1~2週間の安静をとります。
その後、注射療法と運動療法を行います。
注射で痛みを取り除きながら、リハビリにて肩関節の運動を行います。

保存療法で改善が見込めない場合は手術療法を行います。
最近では、手術後に痛みが生じにくい関節鏡視下手術という方法がとられることがあります。
手術後の安静を経て、リハビリにて肩の運動を行います。

●腱板損傷のリハビリ

まずは痛みをとることを最優的に狙っていきます。

前述のとおり、痛みの原因は筋肉と骨の衝突(インピンジメント)ですが、

①肩甲骨の不良な位置・運動
②硬くなった肩まわりの筋肉・靭帯

これらは衝突を助長するので対処していきます。

①肩甲骨の不良な位置・運動
痛みの無い側の肩甲骨と比べて、ある側の肩甲骨は下がっていませんか?
安静時から肩甲骨が下がっていると、物理的に衝突しやすくなります。
さらに腕を上げる際に、肩甲骨が後ろに引けてしまう運動も避けたいポイントです。

②硬くなった肩まわりの筋肉・靭帯
烏口上腕靭帯、大円筋・肩甲下筋は腱板損傷後に硬くなりやすい、注意すべき組織です!
これらの組織が硬くなることも衝突の原因になります。

①②に関しては、
麻痺を呈している場合には電気刺激療法を用いると効果的です。

電気刺激によって肩甲骨の位置を補正しつつ、弱化している腱板を強化できます!
主に電気刺激する筋肉は、棘上筋・棘下筋・三角筋後面を選定します。
電気刺激の強さは、選定した筋肉が収縮してムキッともり上がる程度にします。

リハビリ機器以外でも家庭用の低周波治療器などで代用できますので、
自主トレーニングとして指導させていただくこともあります!
筋肉の選定、使用時間などの詳しい方法はスマホで撮影し、
見返しながら自主トレに励んでいただけます!

さらに電気刺激中に大円筋・肩甲下筋のストレッチを併用すると
肩まわりが柔軟されて、痛みの軽減が期待できます。

詳しくは画像③をご覧ください!

●さいごに
腱板損傷をはじめ、肩の痛みの原因は様々です。
脳梗塞・脳出血を患っている場合には、麻痺の影響も原因に加わります。
改善を目指すトレーニングをご自身の力のみで実行しようとせず、
まずは担当のリハビリスタッフや医療機関を頼っていただき、一緒に解決していきましょう!!

腱板損傷・断裂の治療・手術について詳しく知りたい方は
こちらの外部リンクを参照ください↓
公益社団法人 日本整形外科学会

参考文献
工藤慎太郎,他:腱板損傷に対する軟部組織理学療法.PTジャーナル2020;54:1016-1021

宮本 遼一

この記事を書いた人

宮本 遼一

施設管理者/作業療法士

平成22年に作業療法士国家資格を取得。同年から令和4年3月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院で勤務し、急性期一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、障害者一般病棟、外来リハビリ、訪問リハビリ、介護老人保健施設などを経験。平成27年に促通反復療法(川平法)の研修を修了し、その後は主に慢性期(発症から経過の長い)脳梗塞の患者様のリハビリに携わる。令和4年4月からリハビリスタジオ群馬に勤務。