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脳梗塞後遺症!!麻痺の改善に欠かせない半球間抑制とは?

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皆さんこんにちは、リハビリスタジオ群馬の吉田です。今回は半球間抑制について説明していきたいと思います。人の大脳は右と左とで分かれており、各々様々な働きがあります。しかし、お互いの半球は情報のやり取りを行ったり、抑制したりしています。これを半球間抑制と言います。

メカニズム
私たちの体の仕組としては、左側からの感覚は右の大脳へ右側からの感覚は左の大脳へと伝えられます。そのため、右脳の脳梗塞などでは左側に麻痺やその他の障害を認める仕組みとなっています。しかし左右の大脳は脳梁を介して情報の処理や運動出力を円滑に行うために、相互抑制を行います(半球間抑制)。つまり右脳が活性化すると左脳を抑制し、左脳が活性化すると右脳を抑制する仕組みとなっています。

脳梗塞後遺症の場合
脳梗塞などの脳損傷によりどちらかの脳の活動性が落ちると、この半球間抑制のバランスが崩れ、非損傷側の活動性が高まります。また、後遺症の影響によりバランス能力の低下も認めます。そのため、非麻痺側の上肢でバランスをとることが多くなります。さらに、麻痺側では時間がかかったり、うまくいかないといった場面を多く認め、麻痺側を代償するように日常生活でも非麻痺側の活動が増えることで、損傷側の大脳半球への抑制はより強まります。非麻痺側を過剰に使用することで負の可塑的再構築が生じ、麻痺側の回復の2次的な阻害因子となる恐れがあります。

学習性不使用
上記に述べたように、脳梗塞後遺症により麻痺側の使用頻度が少なくなります。使用しない状態が定着し、使用しないことを学んでしまう現象を学習性不使用と言います。麻痺側の使用が減少することにより、感覚入力および運動指令の必要性とその頻度が低下します。その領域に対応している運動野の支配領域は縮小し、機能低下をより進める可能性もあります。

アプローチ
反復経頭蓋磁気刺激法
専用の治療機器を用いて、脳に繰り返し電気刺激を与えることで、特定の脳の活動を変化させる治療法です。この電気刺激を運動誘発野である一次運動野に高周波で流すことにより、麻痺の回復につながります。また、低周波で非損傷側へ流すことで、一時的に機能を低下させ、反対側の抑制が弱まり麻痺側の運動機能が向上するといわれています。しかし、電気を流すため金属が頭部にある方やペースメーカーが埋め込まれている方、妊娠中の方などは禁忌になります。また専用の機器になるため、いつでもどこでも実施できるものではなく、さらに運動療法と併用していくことで意味があるとされています。
CI療法
CI療法とは麻痺側だけを使い、非麻痺側は使用しない治療法になります。先行研究でも、CI療法により脳の活性化を認めることが明らかになっており、活性化と手の使用に相関が認められています。またCI療法のみではなくTransfer Packageといった、麻痺側上肢に対して獲得した機能を日常生活へ転移させる行動変容を目的とした治療法を併用することで高い効果が得られるとされています。
現在の医療ではこのようなアプローチが推奨されています。脳梗塞後遺症の麻痺により、麻痺側の使用頻度は少なくなりますが、とにかく麻痺側を使うことが重要になってきます。特に手、上肢の使用が大事になってきます。麻痺による使用頻度の減少以外にも学習性不使用といった二次的に使用頻度を減らしてしまう現象もあるため、早期から積極的に麻痺側を使用した運動を行い、麻痺側の改善につなげていくことは重要となります。

まとめ
半球間抑制とは左右の大脳半球がお互いに抑制しあうことをいいます。しかし、脳梗塞・脳出血を患った方ですと、麻痺側の使用頻度が減り、非麻痺側の使用頻度が増えます。そのため、より麻痺側の抑制は強まり、麻痺の改善を妨げます。さらに、麻痺により麻痺側を使用しない状態が定着し学習性不使用となると、半球間抑制のバランスが崩れると共に、麻痺側の感覚入力頻度が減少し機能低下をより進める可能性があります。リハビリの中で麻痺側を使用していくことは大事なことですが、日常生活の中に落とし込み、麻痺側を使用していくことが麻痺の改善には必要とされています。

リハビリスタジオ群馬では、脳梗塞後遺症に対するアプローチを実施していますが、その他にも自宅で実施できる自主練習等の指導も積極的に行っています。
無料体験も行っていますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。

吉田 光希

この記事を書いた人

吉田 光希

施設管理者/理学療法士

平成31年に理学療法士国家資格を取得。同年から令和4年3月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院に勤務し、急性期一般病棟、回復期リハビリテーション病棟を経験しながら、主に脳梗塞・脳出血・脊髄損傷・骨折・呼吸器疾患の患者様のリハビリに携わる。その間に脳卒中患者に対するHALの効果をリハビリ報告として学会で発表。その後も脳卒中後遺症に対するリハビリを中心に学ぶ。令和4年6月からリハビリスタジオ群馬に勤務。

■学会発表歴
令和02年
第28回日本慢性期医療学会 演題名:HALによる歩行訓練により、歩行能力が向上した症例
令和04年
第29回群馬県理学療法士学会 演題名:頚髄損傷患者へ対する歩行神経筋電気刺激療法装置ウォークエイド®を用いた自主練習の効果

■資格
理学療法士免許
登録理学療法士
日本理学療法士協会指定管理者(初級)
Formthotics Authorized Medical Advisor Course

■経験
急性期一般病棟  回復期リハビリテーション病棟