COLUMNコラム

筋トレは超重要!!麻痺した腕・手にも筋力トレーニングは欠かせない!!

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今回は脳梗塞・脳出血後遺症により手足に麻痺があっても、筋力トレーニングが超重要である理由を解説します。

「筋トレってやっていいの?」、「脳梗塞後のリハビリで筋トレは教わったことないけど・・・」
など疑問についてもお答えしていきます。

1.脳梗塞・脳出血後に筋トレは実施するべきか?

脳梗塞・脳出血後遺症により麻痺を呈した場合でも、筋トレによって腕・手の動きやすさが改善することがあります!
ひと昔前は慣例的に「筋トレは実施すべきではない」、「痙縮や痛みが出現してしまう」など否定的な意見が多くありました。
しかし、現在は肯定的な研究結果が報告されています!
麻痺の改善を目指す際に大敵となるのは「手足を動かさないこと」ですので、安易に「トレーニングを実施せず安静に・・・」と判断することは間違いになります。

研究結果では、筋力トレーニングを実施することで筋力増強の効果が得られ、痙縮の悪化はないとの報告があります。
痙縮とは、筋肉が緊張・硬まってしまい、勝手に手足が曲がってしまう・伸びてしまう症状のことです。
たしかに、筋肉が緊張・硬い状態で体重をかけることや、無理に関節を動かそうとすることで痛みが出現してしまいます。
ですので、痙縮の状態をコントロールしながら、無理のない負荷量で筋トレを実施する必要があります。
身体の状態、麻痺の程度に合わせたトレーニング方法を選択することで筋力を増強することができ、腕・手を動かしやすくなることが期待できます。

また、年齢を重ねるほどに筋力は低下していきます。30〜50歳代と比較すると70歳以降では、男女ともに筋力が弱っていることが報告されています。
麻痺が加わることでさらに筋力が低下していくことはイメージしやすいかと思います。

以上のことから筋力を鍛えることは身体にとって超重要になるわけです!!
では、実際にどのようなトレーニング方法があるのかご紹介します。

2.トレーニング方法のご紹介

先行研究では、脳梗塞・脳出血後遺症を呈した方にも腕・手の筋トレにはマシントレーニングが有効であると報告されています。

マシントレーニングの一例

負荷量は60~70%(まあまあ疲れるぐらい)の重さに設定して、10回を1セットして1日3セット程度が推奨されています。
つまり、負荷量は軽すぎても重すぎてもダメなので、療法士がしっかりと身体状態に合わせて調節することが必要になります。

しかし、マシントレーニングは使用できる方が限られてしまうという難点があります。
使用できる方は麻痺が強くない方、筋力が保たれている方に限られてしまいます。

そこで今回はマシントレーニングが使用できない方でも実施できる
実際に利用者さまに提供しているトレーニング方法をご紹介します!!
※画像は左片麻痺を想定しています

➀横向きで寝た姿勢で腕を上げる(画像1)
まずは横向きで寝た姿勢になり、身体下側の肘・膝を曲げて安定した姿勢をつくります。
無理のない範囲で腕を上げていき、できる限り肘を伸ばしながら実施します。

➁両手で腕をあげる(画像2)
ポイントはいかり肩にならないことです。
画像では仰向けになった姿勢を示していますが、腕に力がある方は座った姿勢でもOKです。

●トレーニングの注意点です
回数:10~20回を1セットとして、1日に3セットが目安です。
ただし、痛みが伴う場合は中止します。
非麻痺手のみで頑張らず、できる限り麻痺手に力を入れてましょう。非麻痺手が10割、麻痺手が0割の頑張りでは筋力が強化できません。
筋力が弱い方が実施する場合においても、麻痺手が1割でも2割でもよいので力を入れるように頑張りましょう!
トレーニング後に痙縮が増強しないようにストレッチを実施しましょう。

➂筋トレ後のストレッチ(画像3)
ポイントは脇腹、肩後面の筋肉が伸びているのを感じる程度まで腕を伸ばしてください。
ゆっくりと腕を伸ばし、伸びる感覚が心地よい程度が良い状態です!

ご紹介した方法は一例であり、個々の利用者さまにあった方法を提案することがベストになりますので、「身体に合わないな」を感じた際は中止してください。

麻痺が重度であっても諦めずにトレーニングを続ければ効果は期待できます!
少し話は筋トレから外れますが、
現在、麻痺が重度な方でもトレーニングが期待できるロボットリハビリの開発が盛んになっています。

上肢リハビリ装置CoCoroe AR2

上肢機能訓練ロボットReoGo-J

麻痺が改善するなら、筋トレ、ロボットリハビリなど方法は何だっていいと思っています!!
まずはトレーニングを実施!!そして効果を確かめて、ご自身に合うリハビリを継続しましょう!!

3. 麻痺した筋肉を動かしやすくするには

前述のとおり筋トレは超重要になります。同様に欠かせないのが、神経伝達を改善する施術(川平法、電気刺激など)、腕・手を使う量を増やすことになります。

理由を説明しますと、
脳梗塞・脳出血後遺症により麻痺した筋肉の状態というのは、
➀脳神経が損傷されたことで脳から筋肉に神経伝達が届きにくくなり、力が出せなくなる。
➁➀によって手足が動かなくなり筋肉が痩せていき、二次的に力が出せなくなる
その結果、手足を動かす頻度は減っていき、身体に悪循環を引き起こします。

1 病気発症後、麻痺によって手足が動かせない
2 動かさないことで筋肉が弱る、神経伝達も届きにくくなる
3 更に手足が動きにくくなる
4 さらに筋肉は痩せ、神経伝達ができなくなる(悪循環)

この悪循環を断ち切るためには、リハビリ中、リハビリ以外にもしっかりと手足を動かすことが大事になるわけです!!
前述のとおり、筋肉を太く・強くすること、神経伝達を改善することがとても重要になります。
なので、私がよく利用者さまにお願いすることは、
「神経伝達を改善するためのリハビリは、川平法、電気刺激などを用いて一緒に頑張りましょう!!」
「でも筋トレは私がお教えするので、自宅でも自分で頑張りましょう!!」
この2点です。

当施設のリハビリにご興味ある方はまずはお問い合わせください!
どこまで麻痺が改善するか、あなたの目標が達成できるためにどの程度かかるか相談させていただきます!
無料体験もございますので、まずは体験にて実感して頂ければと思います!

参考文献
野上雅史,他:脳血管障害に対する上肢機能アプローチ.OTジャーナル2021;55:337-341
下瀬良太,他:脳血管障害と筋力.PTジャーナル2022;56:301-306

宮本 遼一

この記事を書いた人

宮本 遼一

作業療法士

平成22年に作業療法士国家資格を取得。同年から令和4年3月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院で勤務し、急性期一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、障害者一般病棟、外来リハビリ、訪問リハビリ、介護老人保健施設などを経験。平成27年に促通反復療法(川平法)の研修を修了し、その後は主に慢性期(発症から経過の長い)脳梗塞の患者様のリハビリに携わる。令和4年4月からリハビリスタジオ群馬に勤務。