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脳梗塞後遺症、手すりがないと寝返りができない!!寝返りに必要な3つの相

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どうもこんにちはリハビリスタジオ群馬の吉田です
今回は寝返りについて説明したいと思います。寝返り動作とは普段は無意識に行っている動作だと思います。横になって休憩している時や、寝ている時など様々な場面で寝返りを行っていると思います。この無意識に行っている寝返りが脳梗塞後遺症の方ではできなくなる場面があります。また動作ができていても手すりがないとできない、という方もいると思います。そこで今回、寝返り動作の仕組みと大事な運動についてご紹介させていただくため、最後まで読んで理解を深めていただきたいと思います。

寝返り動作ができないとどのようなリスクがある
最初になぜ寝返り動作が必要なのか、できないとどのようなリスクがあるのかについてお話しします。
①褥瘡:寝返り動作ができないということは横になったまま、動けないということになります。そのため、自分の体重が一定の場所に集中し、負担がかかり傷になりやすくなります。その傷を放置していると褥瘡へとつながります。
②離床時間の減少:寝返り動作ができないということは自分でベッドから起き上がれません。そのため、誰かの介助がないと車いすへの離床も困難となります。離床時間の低下により筋肉量が減る廃用症候群にも繋がります。
③関節の硬さや痛み:ベッド上での動きができないため、おのずと関節の硬さにつながります。硬くなった関節はその後、動かそうとすると痛みにつながります。痛みが出るため、また動かさないという負のループに繋がります。

寝返りのパターン
寝返りといっても人それぞれたくさんの寝返り方があります。そこで今回は代表的な2つの寝返りパターンを紹介していきます。
伸展回旋パターン
こちらの寝返りのパターンでは主に、下肢・骨盤から開始します。足から頭の方向へ運動は波及していき、この時に頭部は伸展方向に動くのが特徴となります。こちらのパターンでは寝返りたい方向と逆の足で床面を押し付け、寝返りを成功させます。そのため、股関節伸展の筋力低下や可動域の低下があると実施困難となります。身体機能の低下を認めていると、手すりを使用して引っ張り、寝返り動作へとつなげる代償手段が生まれます。
屈曲回旋パターン
こちらの寝返りのパターンでは主に、頭から開始します。頭から足の方向へ運動は波及していき頭頚部は屈曲と寝返る側に回旋運動が起きます。こちらのパターンでは寝返りたい方向と逆の腕を寝返る方向にリーチするように伸ばして動作が行われます。
伸展パターンと屈曲パターンが存在しますが、その後の起き上がりを考えると屈曲パターンの方が重要になるため、今回は屈曲パターンで大事な3相についてご説明をします。

第1相(頚部の動きと肩甲帯の前方突出とリーチが起きるまで)
運動の開始部位は頭頚部からなります。頭頚部の屈曲と回旋が動作に先行し、その後寝返る方向と反対側の上肢が寝返る方向にリーチされます。この時、頭部は胸鎖乳突筋・頭長筋・頚長筋が働き、上肢を前方突出するのに前鋸筋・僧帽筋中部が働いてきます。脳梗塞後遺症により上肢の麻痺が強い方ですと、第1相での前方突出ができずに非麻痺側で手すりを引っ張る代償が生じてきます。

第2相(上部体幹が回旋を始め、上側になる方が下側になる肩の上に配列されるまで)
第1相での上肢のリーチに続き、胸椎、腰椎の順に回旋していき上部体幹が寝返る方向へ回転していきます。この時に寝返る側の内腹斜筋、反対側の外腹斜筋の筋活動が必要となります。また上部体幹が回旋することにより下部体幹・下肢が固定部位となります。

第3相(下部体幹が回旋を始め側臥位になるまで)
第3相では第2相とは逆で、上部体幹を固定し下部体幹を回旋させる動きとなります。
この動きには主に立ち直り反応が利用されています。上部体幹の動きに対しての下部体幹の立ち直り反応で側臥位までの動きが行われています。

実際のアプローチ
脳梗塞後遺症の方ですとまず第1相での麻痺側リーチが実施困難になることがあります。非麻痺側上肢で麻痺側を把持していただき、両手でリーチを誘導します。(画像1)
またその際に頚部も屈曲してくるよう頚部のトレーニングも行います。(画像2)
第2相では体幹回旋の可動域低下により、実施困難になるケースもあります。そういった方にはまずは回旋の可動域を確保したのち動作練習を行います。(画像3)

当施設では歩行の改善・復職希望の方以外にも寝返り動作や起き上がり動作といった、基本動作の改善に向けて利用されている方も多くいらしています。歩行の改善の前に、寝返り動作などの基本動作の改善を図ることで、その後の歩行や日常性活での介助量の軽減が図れます。基本動作の改善や歩行の改善を望んでいる方は、ぜひ体験も行っているのでお問い合わせお待ちしております。

吉田 光希

この記事を書いた人

吉田 光希

理学療法士

平成31年に理学療法士国家資格を取得。同年から令和4年3月まで群馬県玉村町にある医療法人樹心会角田病院に勤務し、急性期一般病棟、回復期リハビリテーション病棟を経験しながら、主に脳梗塞・脳出血・脊髄損傷・骨折・呼吸器疾患の患者様のリハビリに携わる。その間に脳卒中患者に対するHALの効果をリハビリ報告として学会で発表。その後も脳卒中後遺症に対するリハビリを中心に学ぶ。令和4年6月からリハビリスタジオ群馬に勤務。